吉藤 まず高校で、先生に言われて折り紙を教えに特別支援学校に行ったこと。そこの電動車いすがすごく使いづらいものだったのに、みんな「車いすなんてこんなもんだよ」と。「こんなもん」という言葉が大嫌いな私は、そこから猛然と、段差があっても傾かない便利でカッコいい車いすの研究に夢中になりました。そして何度かブラッシュアップした車いすを出品したところ、日本で優勝し、アメリカで開催された科学オリンピックにも参加できたんです。
高濱 いいぞ、いいぞ!
吉藤 そこで出会った外国の高校生は、自分の研究に人生をかけると熱く語る人たちがたくさんいました。じゃあ僕は?なんのために生まれてきた? 車いすを研究したことで、不登校時代のあの孤独は、私だけでなく多くの人が抱えているものだとわかってきました。ひょんなことで「輪」から離れてしまった孤独を解消し、孤独な人に「場」を提供することが自分のミッションだと悟ったんです。人を癒やせるのはAIではなく人だ、ならば人と人をつなぐロボットを作ろうと。
高濱 「OriHime」の開発では実際に体の不自由な人と積極的に交流しているし、数々のコンテストでプレゼンもこなしてますよね。今では人前で話すことも苦ではなくなったということかな。
吉藤 本来コミュ力がない私が自分を出せるようになったのは、「オリィ」と名乗り始めたことと、今の私のトレードマークであるこの黒い白衣をまとうようになってからです。キャラクターメイキングですよ。そもそも私の本名って「健」やかで「太」く「朗」らかという漢字が使われているから苦手だったんです。どの要素もまったく持ってないのに!
高濱 (笑)面白すぎる!名前にまでオチがあるなんて最高だね!
(構成/篠原麻子)
※前編<吉藤オリィが語る、不登校を見守ってくれた母の言葉「折り紙をやってるあなたは目が輝いているからいい」>から続く
朝日新聞出版