親子関係に詳しい東京未来大学こども心理学部准教授、井梅由美子さんは、「子どものタイプにもよるのでケース・バイ・ケース」としたうえで、「お友だち親子の場合、子どもが大人になりきれない可能性を生むこともある」と話します。
「お友だち親子を一概に悪いとは言えませんが、自立を阻むこともある気がしています。就活に親が関わるというのは仲の良さからだと思います。良好な関係はいいことですが、自分で考える力が足りていないと、大人になりきれない子どもになってしまう可能性はあります。いつまでも子どもを子ども扱いしてしまうと、大事な時に自分で決断が下せない大人になってしまうかもしれません」(井梅さん)
発達心理学では中学生から大学生の時期にあたる思春期・青年期は親からの自立や親離れ、アイデンティティーの形成が発達課題とされていて、ある程度、親と子が離れることが心理的な成長につながるとされています。
過度な先回り育児が「決断できない子」につながる?
そもそも思春期の反抗期も全体的にゆるやかになってきていて、親が大学や就活に同行することに抵抗を覚えない学生も増えています。そこには、親が「先回り」して反抗を回避している可能性があると井梅さんは指摘します。
「一番強く反抗する中学生でさえ、今は大人の言うことをよく聞く穏やかな子が増えています。ある授業で学生に聞いたところ、約半数の学生が『反抗期はなかった』と回答しました。さかのぼると乳幼児のイヤイヤ期から、子がぐずる前に親がどう乗り切るか、上手にどうフォローするかを育児情報から勉強している親御さんがとても多い。つまり、幼児のころから子どもが求める前に自ら動く“先回り育児”をしています。それがずっと続き、思春期になっても子どもが反抗する前にうまい関わり方をする。子どもからしてみると『理解のある親』に見えるかもしれませんが、こうして親がフォローし続けると過干渉、過保護になって、大人になっても自立することができなくなるかもしれません」
良好な関係を保ちつつも、子どもの自立をうながすには、親はどんなスタンスでいたらいいのでしょう。
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