「死にたいなら死んでもいいよ」と母に言った日のこと

――岸田家をモデルにしたドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」がNHK総合で放送スタートしました。家族の物語を客観的に見ることで、発見はありましたか?

 ドラマでは、岸田家ができなかった「if(もしも)」をやってくれた感じがしましたね。

 誰しも「あの時こうしていたらどうなっていたんだろう。もっと幸せだったんじゃないかな」みたいな後悔があるじゃないですか。

 例えば、車椅子生活になっても明るく振る舞っていた母が、「本当は生きてるのがつらい。ずっと死にたいと思ってた」と打ち明けてくれたとき、私が「ママが死にたいなら死んでもいいよ」と言った話がドラマにも出てきます。

 河合優実さんが演じる私(七実)は、そのセリフを言いながらめっちゃ泣くんですよ。それを受けて、坂井真紀さん演じるお母さん(ひとみ)もめっちゃ泣く。で、私もドラマのその場面を見ながら、すごい泣いたんです。

 でも、実際の「あのとき」の私は泣けなかった。泣きたいのを隠してた。それどころか、パスタを食べて笑いながら、母に「死にたいなら死んでもいいよ」と言ったんです。

 泣けなかったのは、周りの目が気になったのもあるし、せっかくおかんが正直な気持ちを打ち明けてくれたのに、ここで泣いたらおかんがおかんの役割を果たそうとして、私のケアを始めてしまうと思ったから。

 そうならないように、咄嗟にとった行動がそれだったんですね。でも、そんな私を見てオカンは戸惑っていたし、私は私で泣けなかったことに、どこか罪悪感を抱えていたんです。

 でもその「if」を見たことで、泣いても泣かなくても、道は一緒だったんだなと心から思えました。別に気に病む必要はなかったんだと。結論として「どの道を選んでも、うちの家族は幸せだよね、最高だよね」と思えた。

 だから、なんかすごい不思議な感覚なんですけど、七実に対して「泣いてくれてありがとう」と思ったんです。

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