弟もそろそろ独り立ちしないと、家の中だとちょっと退屈そうで太り気味にもなってきた。だから、祖母の介護認定とか弟のグループホームの手続きをして、祖母と弟はグループホーム、母と私はそれぞれ1人暮らしをして、週末だけ実家に集まってみんなでご飯を食べる、という形をとっています。
週末はそれぞれの「マイブーム」を持ち寄る
――週末に集まるときに、岸田家のなかで流行ってることはありますか?
おかんは永遠に黒豆を煮てます(笑)。
週末という“本番”に向けて鍛錬を積んで、「奈美ちゃん、黒豆の最高の配分を見つけた。市販のやつは甘すぎるから、砂糖を半分にするとちょうどいい」とか言いながら、日本で一番、黒豆の煮方を研究してます。確かに、毎週行くたびにおいしくなってるんですよ。
家族4人でいるときは黒豆を煮る元気もなかったのが、「本来、私ってこういうおもてなしの料理が好きやったんやわ~」と気づいたみたいです。
弟はジェスチャーがブームですね。
グループホームで覚えてきたことをやるんですけど、会うたびに「今までそんなことしたことないやん」みたいなレパートリーがどんどん増えている。
最近は大谷翔平選手とか、カニを食べる人の形態模写をやり始めました。急に「みんなで温泉でカニ食べる」と言い出して、こうやって(両手で、カニの脚を持って水平に引き抜く動作)「ん~ままままま」ってやったりとか(笑)。
家族みんなでカニとか食べたことないんですよ。だから、グループホームの誰かから教わって、社会勉強をしてるんですよね。ほんま驚くことが多いです。
私はよく引っ越すんで、引っ越した先の周辺にあるおいしいおやつを調べて、買って持っていく、おみやブームかな。
そういうふうに、それぞれがブームを持ち寄れるのが楽しいし、うれしいです。
家族っておもしろくて、自分といるときに見せてくれる幸せな姿よりも、自分がいないところで幸せにやってる姿を想像できたほうがうれしいんですよね。
「あ、よかったよかった。私がいなくても大丈夫。やっていけるわ」と思えることがうれしい。近くにいるだけが愛じゃなくて、会えない時間も家族の大事な時間なんだなと感じています。
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