ダウン症の弟と俳優・葵くんのすごい成長

 あと、ダウン症の俳優、吉田葵くんが良太ならぬ草太を演じてくれたのもうれしかったです。

 ダウン症の子が初めて連ドラのメインキャストに選ばれるということで、ダウン症界を揺るがすオーディションが行われたんですよ。

 葵くんは、うちの弟よりも障害の程度は軽いんですけど、やっぱり最初は台本覚えるのがすごく大変そうだったり、アドリブをしちゃダメっていうのが分からないから、すごく凹んだりもしていたんです。撮影を見学に行って、そんな葵くんの姿を見て結構ドキドキしていました。

 ところが、撮影の終盤に見学に行ったら、葵くんは撮影スタッフに「ここはこうした方がいいですか?」と自ら演技について聞きにいっていて、自分の考えたことを空気を読んで話す、ということができていたので、本当にびっくりしました。すごい成長してた。

 うちの弟もグループホームに行き始めた頃から、友達としゃべりたいからというので、急に言葉数が増えて成長したんですよね。そこにも重なりました。

 葵くんの成長とともに岸本家のみなさんも、どんどん本物の家族のように結束が強くなっていました。みんなで乗り越えることで家族って成長するんだな、って。そこは「if」じゃなくて、うちの家族とすごくリンクしている部分です。

「家族が幸せになる」ということの答えが詰まっているドラマだと思うので、ぜひ多くの方に見ていただきたいですね。

※前編〈岸田奈美が語る「絶対に否定しない」母の子育て 「私にもダウン症の弟にも『あんたが一番大事やで』の 二枚舌外交」

※中編〈作家・岸田奈美が語る、母の一番好きなところ 「ようそんなに喜べるなぁ…と感心するくらい本気で感動する」〉から続く

母ひろ実さんの車いすを押す弟・良太さん、見守る奈美さん(写真/川畑樹利佳)
家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

岸田 奈美

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
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大道絵里子
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