おすすめポイント

 お餅を見たことも食べたことがない、だんまりうさぎ。おしゃべりうさぎが焼いてくれたお餅を口にすると、目をまん丸にして「こんなに おいしいもの、だれが つくったんだろう……」と、思わずつぶやいてしまうのがかわいらしいです。だんまりうさぎの心からの言葉だったからこそ、おしゃべりうさぎも嬉しかったのでしょう。おしゃべりは加速していき、おしまいには歌になっていました。今度はおしゃべりうさぎの楽しい気持ちが伝わって、だんまりうさぎも楽しくなり、歌に合わせて体が自然と揺れます。

 そんな楽しいおしゃべりの時間が過ぎ、お別れのとき。「こんど でんわ かけてもいい? あたし、でんわがだいすきなの」と言うおしゃべりうさぎに対して、「ぼくは、でんわは、あんまりすきじゃないな」と答えるだんまりうさぎ。「そんなら、また、あそびにくるわ」と、おしゃべりうさぎは自分の“好き”を押し付けずに、軽やかに去っていきます。その後、別れたばかりのおしゃべりうさぎ宛てにゆっくり手紙を書くだんまりうさぎ。それぞれのやり方、ペースで自分の気持ちや思いを伝えればいいのだと、そっと教えてくれます。電話は苦手と言いながら、ほこりだらけだった電話をピカピカになるまで拭いておく、やさしさも素敵です。お互いを思い合う気持ちが伝わってきます。

「だんまりうさぎとおしゃべりうさぎ」シリーズ(安房直子 作/ひがしちから 絵/偕成社 刊)

 おとなしくて無口なだんまりうさぎと、元気で自由奔放なおしゃべりうさぎ。正反対なふたりが個性を認め合いながら、仲良くなっていく様子が微笑ましく、やさしい気持ちになれます。シリーズを追うごとに季節は移ろい、ふたりの仲がよりいっそう深まっていくのも楽しいところです。ひとりぼっちでいるのが当たり前だった、だんまりうさぎが少しずつ変わっていく姿にも注目してみてください。

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