合格すると全部肯定されてしまう
安浪:中学受験も、たとえ不合格で終わっても「あのときは本当につらかったけれどあそこであれだけ踏ん張ったことは良かったね」などといった振り返りがきちんとできれば、結果は合格でも不合格でもどちらでもいいと思うんです。合格すると全部肯定されてしまうけれど、そのプロセスのなかには良くなかったこともきっとあったはず。例えば塾に毎日計算の宿題を出しなさい、と言われていたのにやらなかったとか。でも合格するともういいじゃん、合格したんだから、と流れてしまう。でも不合格だったご家庭は、やっぱり塾に言われたことをきっちりコツコツやっていかなきゃダメだったんじゃないか、と振り返りができていたりする。そのようなお子さんは、中学に入ってからもそこは大事だよね、みたいに重く受け止めることができるんですね。
矢萩:成功体験はもちろん大事ですが、学びの大きさで言ったら、失敗した経験からのほうが大きいと思います。成功体験はできたことに対して自信を獲得できるわけですが、失敗体験は、できなかったことを「できる」に転じるヒントと学びがあります。失敗したからこそ、慎重になれるかもしれないし、人の痛みもわかるかも知れない。最終的にはそのほうが大きな成功や幸せにつながるかもしれません。
安浪:習い事の話に戻しましょうか(笑)。習い事って5年の夏、6年生になったとき、6年の夏、6年の秋など、だいたい見直すタイミングがあるんです。今までと同じようにやっていると物理的に回らなくなるようであれば、何かしらを変える必要は出てきます。3つやっていた習い事を1つにするとか、3時間拘束されるお稽古ごとを、もうちょっと軽い負荷のものに変える、とか。野球とかサッカーなどチームスポーツだと、間引くのが難しいとよく言われますが、チームの練習はお休みして、週1回1時間だけマンツーマンでサッカーを習う、など、負荷を変えて最後まで続けていたご家庭もあります。
矢萩:とにかくこういう場合、やめるべきか続けるべきか、という二択で考えがちですが、あいだだってとれるんです。どれを残すのか、バランスはどうするのか、別の場所で別の方法で続けられないかなど、検討してみてほしいですね。
(構成/教育エディター・江口祐子)