志望校に合格すると「振り返らない」
矢萩:習い事だけでなく、映画を見た時でも遊びでもなんでもいいんです。どんな体験でもちゃんと振り返りをして「今日の体験はこういうことに関係があるよね」と落とし込んで使えるようにすることがとても大事です。体験だけで終わりにするとそのまま流れていっちゃうので、やったことが今後や今後の人生にどう関わってくるのか、あるいは今勉強している目の前の勉強のどういうことと関係がありそうなのか、そういうことにまわりの大人が対角線を引いてあげると何でも糧になりますし、そういう感覚を持っておくと勝手に自分で紐づけが始まります。
安浪:経験を流さないで振り返ることって本当に大切ですよね。話が少しずれるかもしれませんが、中学受験って、志望校に合格するとあまり振り返らないんですよね。「良かった、良かった」で終わってしまう。塾から合格体験記を書いてくれと言われたら振り返るかもしれませんが。
矢萩:確かにそうかもしれない。
安浪:それに対して不合格だったご家庭は、親御さんが「何がダメだったんだろう」「何が足りなかったんだろう」って、ものすごく振り返りをやっている。もちろん、合格、不合格は当日の運によるところも大きいんですが、不合格だった場合の振り返りはそのときはとてもつらいけれど、その後すごく身になることが多いです。合格の場合はそれがない分、怖いところもあるなと。
矢萩:それって、問題演習の段階でも全く同じです。例えば記号で答える問題。間違ったら見直しをするけれど、適当に答えて当たったら見直しをしない。だから僕は適当に書いたなら何かマークつけておいて、と、よく言っているんです。適当に答えたけど当たった、イエーイではダメで、着実に成長するためにはちゃんとわかって正解だったのか、そうでないのかをしっかりと振り返って仕分けしておかないといけない。記録しておくのは、慣れるまではめんどくさいかもしれないけれど、ちゃんと間違いを発見することに意味があるんだな、という実感を6年生ぐらいで持てたら、その後もすごく学びになると思いますね。
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