遠回りな気がしても、効果が期待できることも
安浪:それはすごいですね。
矢萩:通常の中学受験のカリキュラムを網羅しようとしたら絶対的に時間が足りません。だから彼女の場合、網羅しようとしないで、適性検査型の自分に相性が良さそうな学校を選び、得意なところを生かしながら得点できるようにしよう、という受験だったんです。そう考えると、彼女がやっていた習い事の大半は、受験とも大いに関係があった。たとえば、作文教室とかそろばん教室というのは、受験で問われる力とも隣接しているんですね。絵画教室だって、観察力、思考力、表現力に関係しています。受験対策と考えると遠回りな気がしてしまいますが、本人がやりたくてやっているなら、むしろ本質的な力が身につく方法でもあるんです。当然、中学受験での効果も期待できます。
安浪:そのあたりが、サッカーや野球といったスポーツの習い事とは少し違いますね。これらも得るもの、学ぶものはたくさんありますが、入試の教科自体に直結しているかというと、ちょっと違いますもんね。
矢萩:もちろんスポーツの習い事も、集中力や人間的成長にはすごく役立つと思うんですが、受験勉強の中で成果を感じるには結構時間がかかったりします。習い事によっても影響はだいぶ違います。例えば、ボーイスカウトをやっていた子は、理科がすごく伸びる傾向があります。それはやはり焚き火をしたり、天候に敏感になったり、といった、体験と学びが繋がるからなんです。そのためにはまわりの大人が「この体験はあの問題と関係があるよ」とか、逆にある問題を前にしたときに「君のあの体験が使えるはずだね」といった“関係線”を出してあげることが大事です。ちゃんと教科と結びつけるのはプロでないと難しいかもしれませんが、ほんのちょっとした気づきを共有するだけでもいいんですよ。
安浪:わかります。たとえば食塩水の問題で水を入れると濃度が濃くなるのか薄くなるのかピンとこない子に、「カルピスに水を入れると味が濃くなる?薄くなる?」と聞くと、あ、そうかと繋がったりします。
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