【横浜創英中】“アウトプットする力”を問う

横浜創英中学・高等学校(2023年)

 横浜創英中学・高等学校の国語では7年前から、写真を見せて、「どのような場面ですか。見ていない人にも伝わるように説明しなさい」という問題を出題している。

 この設問を担当している同校国語科の北田八千代先生によると、将来の子どもが求められる能力の一つとして、「自分の考えたことをアウトプットする力」が必要になると考えており、この設問はそれを踏まえたものだという。

「とって代わることができない唯一の自分を創造していく上で、思いつき、言葉、文字、伝達の能力を見極めたいと思っています。毎年テーマを考えて、それに沿うような動きや場面を見つけて撮影しています」(北田先生)

学校は思考力を問う問題で、生徒の可能性を見いだしたい

 後藤さんは塾講師時代に国語の授業で、「答えは必ず文中(素材文)にあるから、本文から目をそらさないように!」と教えていたという。

「今はもうそうじゃない。正解はないから自由に考えて自分の言葉で伝える力が求められています」(後藤さん)

思考力を問う問題では、作問や採点に苦労がつきものだ。

「1回の試験のためだけに、資料や図版を用意することもあるので、その労力はかなり大きなもの。採点も答えが一つではないので、想定される模範解答を大量に準備しておいたり、ブレが出ないように自由記述の設問は1人の先生が全部を見るようにしたりするなど、かなり大変です。なぜこれだけの労力をかけるかというと、生徒の可能性を見いだしたいから。奇抜な問題に見えても、設問と資料をじっくり読めば答えが導かれるように作られていますし、そこに先生の愛を感じます。きっと生徒の面倒見がいい学校なんだろうなと思わずにはいられません」(後藤さん)

「入試問題は1日目の授業」と言われるが、後藤さんは、思考力を問う問題に接するたびに、そのことを実感する。

「中学の先生は、『うちに入りたい子を入れたい』とよくおっしゃいます。正解のない問題に不安を抱かれるかもしれませんが、過去問題でその学校の傾向を知っておくだけでも違います。家庭内の会話でも普段から子どもに意見を述べさせてみるのもいいでしょう。これらの問題は、偏差値にとらわれないのが特徴。特徴的な入試をする学校が志望校なら、むしろラッキーと思うべきです」(後藤さん)

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