最近、中学受験のキーワードとして「自走」という言葉をよく聞きます。『中学受験自走モードにするために親ができること』(講談社)などの著者で、首都圏を中心に家庭教師をし、中学受験のコンサルも人気の長谷川智也さんに、「中学受験で子どもを『自走』に導く大切さや、親のサポートの仕方」について聞きました。発売中の「AERA with Kids2023年秋号」から紹介します。

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小さなハードルをいくつも越える練習を

 フリーランスのプロ家庭教師として、中学受験指導だけでなく、中高一貫校に通う子どもたちも指導しています。僕のもとに相談にくる中高一貫校に通う生徒たちは、入学直後につまずいた生徒が多い。不登校になったり、学年順位が最下位層になったり。そうした生徒たちには、一つの傾向が見られます。それは、受験勉強が本格化する小4から小6の時期に「親御さんが手取り足取り段取りを考え、導いていた」ということ。親御さんたちは、受験勉強が終わるなり手を離すので、子どもたちは自分なりのやり方で主体的に勉強すること、つまり、「自走」することができなくなっているんです。

 いまは情報が世にあふれているため、合格するための成功パターンを親御さんが自ら研究できる時代です。ですが、「成績を上げること」に合理性を求めすぎている、とも言えます。対策自体がメソッド化しているうえ、本当に子どもに合うのか考えなくなっている。親御さんが「思考」しなくなっていると感じます。子どもがつまずく前に石を取り除くのではなく、挫折させることも時には必要です。「このまま模試を受けても、成績は伸びないだろう」と感じた時は、一度転んで痛い思いをさせたほうが次につながります。子どもは悔しい思いをすると、自分なりに頑張ろうとします。

 メンタル面で言えば、受験勉強が本格化する前に、勉強に対して抵抗をなくしておくのが理想です。また、たとえ優秀な子でも小5の夏前や秋以降、上位校を目指す子ならば小6の秋以降も精神的に大変な時期がやってくる。

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古谷ゆう子
古谷ゆう子

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