中学受験は「しなくてはいけないものではない」だけに、親子ともに悩みがち。まずは何から考えたらいいのか、中学受験を知り尽くす、知窓学舎塾長の矢萩邦彦さんと、進学個別桜学舎塾長の亀山卓郎さんに聞きました。AERAムック『偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2024』(朝日新聞出版)から紹介します。
【写真】息子の中学受験を直前で「断念」した人気タレントはこの人2023年の首都圏の私立・国立中学校の受験者数は過去最多、受験率も過去最高となった。少子化が続き、物価高などの社会問題もあるなかで、なぜ受験者数は上がり続けるのか。その理由の一つに、コロナ禍において学校ごとに対応の差があったことがあげられる。
当時、私立のほうが公立よりも学びを持続させるための対応が柔軟だったこともあり、多くの家庭では教育に対する不安や不満が広がった。わが子の教育をどうしたらよいかをじっくり考えるきっかけとなったのだ。
自分たちの受験の軸、もってますか?
加えて、家庭の意識の変化について次のようなことがあるという。
「もともと私立校は正解のない問題に対応できるような本質的な学び、探究的な学びを打ち出している学校が多く、ICT 学習も進んでいます。魅力的に感じる親子は多いですね」(矢萩さん)
「とくに首都圏では、偏差値の高い低いにかかわらず良い学校が多く、親の価値観も難関校以外の選択肢を持つように変わってきていると感じます」(亀山さん)
どんな状況下においても楽しい中学校生活を送ってほしいし、これからの社会で求められる「生きる力」を備えた、たくましい子に育ってほしいと親は願うもの。だからこそ中学受験態勢に入る前に、受験生活の不安や疑問を、できるだけ早く解消しておくのが賢明だ。
「危険なのは、まわりの空気に流され、なんとなく受験モードになるケース。最初の時点で〝わが家の受験の目的〞を決めていないと、次第に夫婦や親子間で気持ちのブレが生じ、勉強の成果が出ないばかりか、家族関係も悪くなってしまいます」(亀山さん)
中学受験というと、すぐに「学校をどこにするか」「どの塾に行くか」などと考えたくなるが、その前段階での「家族の心構え」をしっかり決めることが先決のようだ。
「そのときは子どもが主体的に受験をするようにもっていき、家族みんなでサポートする態勢がとりわけ重要。〝子どもと家族の合意形成〞があってこそ、最終的にどんな結果になっても、やってよかったと思える幸せな受験ができます」(矢萩さん)
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