髪の毛って、丸刈りにすると髪質が変わるって聞いたことがあったんだ。野球をやっていたし、髪質を変えたくて丸刈りにした。ドラッグストアに売っている1200円くらいの縮毛矯正材(しゅくもうきょうせいざい)を試したこともあったよ。美容院でも縮毛矯正を試してみた。やれることはとことんやったんだけど、天然パーマのママで。それであきらめて、放っておくことにした。
ニキビも、夜、薬を塗りたくったり、ニキビに効くっていう化粧水を欠かさずつけたり。油がよくないと思いこんで、お肉を食べるのもやめていたなあ。思春期はしっかり食べないとからだによくないのにね。洗顔もめちゃくちゃがんばっていた。本当はあんまりこすっちゃいけないのに、とにかくニキビを消したい一心でね。思春期ニキビだったから、そうこうしているうちに症状は治まっていったんだけどね、もがきまくったよ。
芥川龍之介の『羅生門』っていう小説は知っている? 羅生門にはニキビ面の男が出てくるんだけど、高校の国語の授業で題材になっていてね。そのときはクラス全員がよしおのことを見ているんじゃないか、って、気になって授業を休んだことがあるくらいだよ(笑)。今となっては思い出話だけど、当時は相当つらかったんだろうなあ。
まついちちゃんからの相談をきっかけに自分がコンプレックスと向き合ったことを振り返ってみて、すごくもがいていた時間があったことを思い出した。もしかしたらそのもがいた時間が、コンプレックスを受け入れる上で必要だったのかな、って。
他人からしたら人の悪口なんて一瞬のことで、気にしないほうがいいんだけど、「気にしないで放っておけばいいよ」って言葉で放っておけるほど、自分にとっては軽い出来事じゃないもんね。よしおは、「これだけもがいてダメだったんだからもういいや」ってあきらめることができて、コンプレックスを受け入れられるようになった気がするよ。
■「いいな」って思う人の笑い方をまねしてみよう
整形で鼻ひくひくが直るのか……それは専門家じゃないからちょっとわからないけど、整形はからだにメスを入れることもあると思うから、やるとしてもすっごく考えないといけないよ。後戻りは難しいだろうからね。それに、まついちちゃんの笑い方は動作だから、整形で変わるのかはわからない。
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