それでも「学校イヤだ!」とぐずっていたら、どこからともなく校長先生がタタタッと現れて、「みんなそうよ!」って笑福の肩をガッと抱いて「まず保健室に行きましょう」って連れていってくれたんです。さすがです。息子はあとで「校長先生、女の人だけど力は強かった」って妙に感心していました。 

 学校は嫌がらなくなりましたけれど、勉強には苦手意識があるんです。私と同じ。私も「あ」を10回書くとか本当につまらなくて、ノートをひっくり返して逆から書いたりする子でした。そしたらなんと、同じことを笑福もしていて、「私と一緒だ~」って。

 宿題でわからないところは、最初は親が教えていたんです。でもダンナはどんどんあせるし、私は勉強が苦手だから「そんなのわからなくていいよ。別に困らないし」って言ってダンナに叱られる(笑)。家庭教師の先生に相談したら、「笑福くんのように基礎のことがまだできていない場合、それを親が根気強くやっていくのはかなり大変です」と言われました。

勉強を好きになるためにプロの力を借りよう 

 意を決して、夏休みは週に2回、家庭教師の先生にきてもらうことにしました。「小1で家庭教師」っていうとめちゃくちゃ教育熱心に思うかもしれないんですが、うちは少し違うんです。勉強ができる子にしてほしいんじゃなくて、勉強の楽しさを伝えるためにプロの力を借りました。

 息子の学校生活は始まったばかりで、これから間口を広げていろんな知識に出合うはずなのに、ひらがなが苦手で、その入り口で勉強を嫌いになっちゃったらかわいそうだなぁって。勉強が嫌いだと、学校でずーっとイヤなことをすることになります。少なくとも私はずっとつらかった。

 家庭教師の先生は、やっぱりさすがですね。かるた遊びを取り入れたり、宿題もわかりやすく教えてくれたり、ときには親も参加していっしょに遊びながら勉強したり。息子も文字を読むことが楽しくなったみたいで、この前おそば屋さんで「う、ど、ん」といきなり読んで、今度は下から「ん、ど、う」って(笑)。自分から文字を読む姿を見たのは初めてでした。うれしかった。

(取材・文/神 素子)

※全文は発売中の「AERA with Kids 2022年秋号」(朝日新聞出版)でご紹介しています。

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