――1人でそんな過酷なところへ行って、逃げ出したくなりませんでしたか。

 アメリカに親戚や友達がいたわけではなかったので、1人で行って、学年でも日本人は1人でした。でも、逃げ出したいと思ったことはなくて……。というのも、逃げられないんですよ(笑)。アメリカ人は帰る家が(国内に)あるからいいけど、僕にはない。だから帰れると思ってもいない。ホームシックにも一度もなったことがなくて、親のほうがさみしがっていた気がします。

――実際は、厳しい生活にリタイアしてしまう人も多いのでは。

 そうですね。夜逃げ同然で去っていく人もいました。ついていけなくなってしまうんですね。何が厳しいって、体力的にもきついですが、精神的に厳しいんです。日々追いつめられる。だからプレッシャーに強く、打たれ強くもなりますよね。これは「実戦でのプレッシャーにも負けないように」という軍事訓練の一つなんだと思います。

――食事のときくらいは楽しく過ごせたのでしょうか。

 うーん。初めの1~2カ月くらいは、下を向いて食べてはいけないんです。なぜなら下を向いていると、その間に敵に撃たれてしまうから。下を見ている隙にやられちゃうんです。だから正面を向いて食べる方法を学びました。和気あいあいとしているときもあるのですが、緊張して食べるときも多かったですね。

――トランプ米前大統領もNYミリタリーアカデミー出身です。

 そうそう。トランプ前大統領が、何かで「この学校に行って人生が変わった」というようなことを話されていて、「僕と同じだ!」と思いました。それだけ青春時代に影響を及ぼした学校です。

――トランプ氏は、やんちゃすぎてこの学校に入れられた、とも。

 やんちゃな子、いっぱいいるんですよ(笑)。例えば「腕立て伏せをやれ」と言う指示に対し、「ふざけんな!」と反抗してすぐ喧嘩になる。年齢的にも、血気盛んな時期ですしね。

――その環境の中で、約3年間過ごされたのですね。

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