相談者さんが「痛手」と感じている「1人5千円のお年玉」は、義理のお姉さん夫婦の一番初めに生まれ、今中学3年生のおいっ子を大事に思い、5千円のお年玉を渡したことから始まったのではないでしょうか。まさかその後2人もきょうだいが生まれるなんて、考えることもなく。
「自分の娘は1人なのに不公平」などと考え、「自分の気持ちと財産を守る方法」を模索されるのであれば、もう来年からお年玉は廃止にしてしまってはどうでしょう。あるいは「やっぱり初志貫徹をしよう」と考えるなら、経済的余裕ができるように副業するなど努力してはいかがでしょうか。
「力足らざる者は、中道にして廃す。今女(なんじ)は画(かぎ)れり」(『論語』雍也第六)
人としての生き方を説いた『論語』の有名な一節です。
「努力をしない人は、志を貫くことができずに途中でやめてしまう。お前は、自分自身で限界をはじめから決めてかかってもう無理だと、あきらめているのだ」という意味です。
副業で稼いだお金で、おいっ子・めいっ子の将来のためにと、喜んでお年玉に1万5千円あげることができ、自分自身の中に家族の愛をより大きく感じることができるなら、そうすればよいと思います。おい・めいのみなさんが成人を迎えるまで、お年玉をあげ続けるのだ、と思ってがんばってください。
ただ、繰り返しますがお年玉は、必ずあげないといけないものではありません。お歳暮や年賀状のやりとりも、心から相手に感謝する気持ちがない形だけのものはすでに少なくなってしまっているのですから。相談者さんが、おい・めいを大事に思う気持ちがあれば、他の方法でそれを表してもいいのです。
一番よくないのは、自分を「小さい人間」なんて、卑下した考えをすることです。そんな父親は、家族からも嫌われてしまいますよ!
【まとめ】
経済的に大変でも、副業をするなどして最初においっ子を大事に思ってお年玉をあげた気持ちを貫くべきだ。自分を卑下するような考えなら、現金をあげるのをやめよう
山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。大東文化大学教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『ステップアップ 0歳音読』(さくら舎)『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。母親向けの論語講座も。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。