また、多くの受験生を見てきて感じるのは、本気になるのが遅い受験生がかなり多いということです。中学受験の場合、早生まれや家庭環境といった要因も成熟度に大きく影響します。そのため、受験を現実的に捉え、自分の弱点を認識して主体的に弱点を克服しようという心構えができるタイミングにも個人差があります。塾業界では「夏が勝負」という声を聞きますが、その理由のひとつは「基礎は夏期までで終了し、9月からは問題演習」という塾のカリキュラムの都合によるものです。その場合9月以降にエンジンがかかっても遅く、基礎をやり直すチャンスがないまま、難しい過去問題を直前までひたすらやらされることになってしまいます。そうなればせっかくのやる気がしぼんで無力感を煽り、自己肯定感を下げてしまいます。そういう状況は今後の人生においてマイナスになりかねません。自力でポジティブに持っていける小学生はほんのわずかです。関わる大人が結果よりもプロセスを評価し、経験を活かせるようにサポートしてあげたいところです。
■成績が上がらない──塾や勉強方法を変えるべきか
成績が上がらない場合、まず第一に考えなければならないのが勉強方法の見直しです。やればできるような実力に合った学習で、達成感を得られる方法に変えるべきです。具体的には思い切って5年生の内容からやり直すことをお勧めします。ほとんどの進学塾において、5年生から6年生の夏休み前まででひと通りの範囲が学習できるようにカリキュラムが組まれているので、基礎からやり直すのであれば4科とも5年生の2月分からがいいと思います。
次に塾を変えるべきかどうかですが、判断基準は本人が楽しんで行っているかどうかに尽きます。授業が楽しくて、講師や他の受験生との関係も良好ならば無理にやめる必要はありません。通いながら家庭でできる対策もあります。しかし、そうでないならば通い続けることで自己肯定感を持てないまま実力も上がらないという悪循環に陥ってしまう可能性があります。
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