逆に、この時期にたとえ成績が思うように上がっていなくても、悩まずにやり切るタイプの受験生は「将来科学者になりたい」や「地元の中学には絶対に行きたくない」などポジティブであれ、ネガティブであれ、強い思いがあります。最初にどのような思いで始めたのか。それが明確にあれば、思い出すだけでもモチベーションをキープできます。また、受験をゴールではなくプロセスとして考えるならば、合格の経験も不合格の経験も同様に意義があります。失敗したくない・させたくないという理由で中学受験を断念してしまうことは、貴重な経験のチャンスを逃すだけでなく、逃げ癖をつけてしまいかねません。そのような状態で途中でやめてしまうことは、後ろめたさを残してしまうだけでなく、打たれ弱く、前向きになりにくくなってしまう可能性もあります。

 大事なことは、残った時間でできる限りの努力をして、失敗してもいいから挑戦してみようと思えるように、周りの大人がサポートすることです。実際、中学受験生は入試直前まで伸びます。ひとつ覚えればひとつ分成長している。そういうテストでは見えない成長を認めてあげることで、本質的で内的なモチベーションを育てることができます。受験はプロセスであり、将来どこかで活きる経験のひとつと捉えて、長い目で見守ってあげる余裕を持ちたいところです。

新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える 保護者のための「正しい知識とマインドセット」

矢萩 邦彦,矢萩 邦彦

新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える 保護者のための「正しい知識とマインドセット」
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矢萩邦彦
中学受験塾塾長 矢萩邦彦

やはぎ・くにひこ/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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