「小学校受験に挑むにあたって、料理は子どもの学びを膨らませる最強のツールでした」と笑うのは、料理をメインに据えた受験対策で昨秋、長男(6)を私立小学校合格に導いた、子ども料理研究家の武田昌美さんだ。t武田さんはフレンチシェフだった父の教えで、料理の才能を開花させ、20代で東京・世田谷に子ども向け料理教室「リトルシェフクッキング」を起業。どんな難しいレシピや技をわが子に伝授したのかと思いきや、返ってきたのは「できるだけ本人のやる気に任せ、私は受験本番まで我慢、我慢の連続でした」という意外な答えだった。
【写真】武田昌美さん* * *
■受験では料理にまつわる問題がよく出る
武田さんと長男の「お受験」が始まったのは、本番1年前の秋。自宅から通いやすく、リベラルな校風で知られる私立小中高一貫校の募集要項をチェックした。
「子どもの自発性や実体験を重んじ、他者からの評価にしばられずに過ごすという教育方針に惚れ込みましたが、ペーパーテストも面接もないので、一言でいうと、対策しづらい学校でした。幼児教室で知識を詰め込まれ、トレーニングされた子どもは、かえって合格から遠のいてしまうのです。かといって、この学校しか受けないというわけにもいかず悩みました」
どんな環境で育ってきたかを学校側に見られる小学校受験は、「親の受験」ともいわれ、日ごろの生活がカギを握る。武田さんは、併願する学校も含めて、小学校受験全般で、自分の専門分野である「食」にまつわる課題が多いことに着目した。
「たとえば小学校受験では、野菜や果物のイラストを見て生育する季節や断面図を問う問題、おやつの形に粘土制作する課題などが出されます」
私立の名門、慶應義塾横浜初等部では、過去に、一定時間の物語を聞いて理解力をみる「お話の記憶」と呼ばれる課題で、川で釣った魚を焼いて食べる、ウィンナーや卵焼きが入ったお弁当を広げるといった場面が読み上げられた。国立の伝統校、お茶の水女子大学附属小学校でも、「ザルに入ったジャガイモ5個を3人で分ける方法」を問われたことがある。
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