安浪:子どもが勉強を楽しめるかどうかは、純粋にその内容に興味がある場合もあれば、やはり教えてくれる先生による部分も大きいと思います。興味関心を引き出すのがうまい先生、わかりやすく教えてくれて「解けた!」という達成感を与えてくれる先生、いつも笑わせながら面白い授業をやってくれる先生。そういう先生に当たると、その科目が好きになるし、「楽しかった」と言って塾から帰ってきます。ただ、その楽しさを家庭学習でも維持できるかというと、話はまた別で……。家庭でも勉強が楽しい、と思えるためには、本当の意味での知的欲求とか頭を使って解き切った時の爽快感とかが必要じゃないですか。そこまでいくのがなかなか難しいですよね。
矢萩:学校選びに話を戻すと、子どもの性質やどんなことを大事にしているか、あるいはどんなことが嫌か、というところをちゃんと見てあげることも重要だと思っています。例えば電車通学にしても、大人は10分、20分通学時間がのびても「こっちの偏差値が上の学校のほうがいいよね」と言いがちなんですが、その10分、20分の満員電車が我慢できなくなっちゃう子だっています。本人が納得しているなら我慢できることなんでしょうが、学校に対して積極的になれていない場合、通学がつらいことが引き金になって、学校自体が嫌になってしまうこともある。それは非常にもったいなと思います。
安浪:あとはやはり、親御さんの価値観でしょうね。どういう6年間にしたいのか、受験してまで行かせるならそこに何を求めるのか、家庭の軸を持っておかないと、どこの学校に行っても同じように素敵に見えてしまいます。
矢萩:親も子も受験を通して自分軸を作ることが大事です。軸がなければ選べないし、軸があったら逆にどんな学校行っても「置かれた場所で咲きましょう」じゃないですけれども、その場所を最大限に活用して生きていくことができると思います。
(構成/教育エディター・江口祐子)
○安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。
○矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。
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