安浪:そういったことがない子たちでも、6年の秋冬頃には最終的に「ここに行きたい」という気持ちになってきます。いくつかの学校を見たり、塾の先生におすすめされたりするなかで、親が何となくこのあたりの学校かな?と赤本を買ってくる。その赤本のタイトルを見ているうちに、それが志望校になってくる感じですね。

■子どもが爆発的なパワーを出すのは

矢萩:いつも見ているものに慣れてきて、だんだんそこがいいのかなと思ってくるってこと、ありますよね。早いうちは志望校がなくても、勉強をやってきていろいろな経験も積んで、6年生の秋ぐらいにここだな、と思う学校が出てくるのはありだと思うんです。うちの塾では2月1日の試験を受けてから「この学校じゃないと思った」と言い出す生徒もいて、それから急いでそれ以降に受ける学校を見直すケースもありますよ。

安浪:ちなみに、中学受験の動機やモチベーションとして、子どもが爆発的なパワーを出すのは「いまの小学校が嫌だ」ってなったときなんですよね。理由はいじめがあるとか、友だちと価値観が合わないとかいろいろありますが、「今の学校の子たちと同じ中学に行きたくない」と思ったとき、いちばん本気になりますね。居場所を得るために命をかけて勉強する。もちろん、それでも子どもですから、気が乗らない時もありますけどね。

矢萩:塾側には「この偏差値帯ならこの学校を受けてほしい」といった戦略もあるので、学校をいろいろ見ることを勧めないケースもありますね。塾と学校との癒着もありますし、そもそも先生たちが知っている学校情報だって、学校広報によるところが大きいんです。そういった偏った情報のなかで、まだ自己決定力がついていない子どもたちに好きなところを選びなさいというのは難しいと思っています。だから僕は、自分の目標に合った学校や好きな学校を見つけることは大事だと思うけれど、それ以上に大切なのは、今やっている勉強が楽しめるかどうかだと思うんです。なんで受験しようと思って、なんで塾に行っているのか。その理由が、まずは勉強が面白いから、となる学びの環境がいちばん理想だとは思っています。

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