密を避ける、外出自粛──それらを逆手に取った新たな食サービスが人気だ。こんな時代だからこそ「わが家で美味しいレストラン」はいかが? AERA2020年8月10日-17日合併号から新型コロナで大きく変わった飲食業を紹介する。
【写真の続き】自宅にシェフやフードトラックがやってきた!(計9枚)
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「ゴミの分別は?」
「アレルギーはありますか?」
7月の日曜日、都内に暮らす江口家を訪ねた出張シェフRyu(リュウ)さんこと、畑(はた)竜介さん(30)がまずしたのは、「ハウスルール」の確認だった。江口家は、学さん(38)、志穂さん(33)と茉菜月(まなつ)ちゃん(1)の3人家族。「たまには家では作れないようなフレンチを食べたい」と、志穂さんが依頼した。小さな子どもがいると、外食はしづらい。新型コロナウイルスにより、ますます難しくなった。
志穂さんが利用したのは、出張シェフのマッチングサービス「シェアダイン」だ。サイトから申し込み、シェフとやりとりしてメニューを決める。食材や調理器具は、家庭にあるものを使う。
リュウさんは、コーヒーフィルターにデザート用のヨーグルトを入れ水切りを開始。メイン料理の豚肉に塩をすり込み、さらにトウモロコシのヘタにフォークを刺し、ガスコンロの火にかけるとパチパチした音とともに香ばしい匂いが広がった。
■自宅で非日常の味わい
「料理用のバターは無塩がいいんですか?」
「肉料理に使うローズマリーは何本くらい?」
リュウさんの手際のいい作業に見入りながら、日ごろの料理の疑問を尋ねる志穂さん。プロの意見を直接聞けるのは貴重だ。3時間後、予定の料理10品が出来上がると「うわぁ」と歓声が上がった。
「今度、お友だちの家族も一緒にいいですか。作り置き料理もお願いできるんですか?」
志穂さんは、リュウさんに早くも次回の打診をしていた。
「レストランの料理は、室内の雰囲気や給仕なども含め非日常の味わい。くつろいだ空間で食べる、家庭の料理はまた別ものです。それぞれに良さがある」