「魚介豚骨で独立するな」と師匠に言われても押し切った練馬のラーメン店主の挑戦 (1/4) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「魚介豚骨で独立するな」と師匠に言われても押し切った練馬のラーメン店主の挑戦

連載「ラーメン名店クロニクル」

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井手隊長AERA#ラーメン#井手隊長
「特製四つ葉そば」は比内地鶏をメインに地鶏をブレンドした濃口醤油味。煮玉子をトッピングし、チャーシュー増しにした。一杯1030円(筆者撮影)

「特製四つ葉そば」は比内地鶏をメインに地鶏をブレンドした濃口醤油味。煮玉子をトッピングし、チャーシュー増しにした。一杯1030円(筆者撮影)

 日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、名店店主が愛する一杯を紹介するこの企画。埼玉県の郊外にありながら行列が絶えない名店「中華そば 四つ葉」。都内の人気店に勝るとも劣らない超洗練された一杯を提供する。そんな「四つ葉」の店主が愛する一杯は、大好きな魚介豚骨にこだわり続ける店主が作る究極の一杯だった。

【写真】ラーメン屋で人気の「まぐろ丼」はこれだ!(全9枚)

■寿司屋の息子が“ラーメン”で後を継いだ理由

 ラーメン店を開業する際に、ラーメンの味と同じぐらい、もしくはそれ以上に重要なのは「立地」である。渋谷、新宿、池袋のような繁華街はもちろん、オフィス街や学生街のある駅、そしてターミナル駅など、オーナーは少しでもいい立地でお店を開こうと日夜リサーチしている。いくら美味しいラーメンを提供しても、人がいなければ売り上げは立たない。もちろん繁華街でお店をオープンしても、周りとの競争に勝てずに、続かないお店も数多いのだが。

 埼玉県比企郡川島町にある「中華そば 四つ葉」はそんなセオリーをぶち壊した名店だ。スマホの地図アプリで場所を調べれば一目瞭然。周りに駅は見当たらない。最寄りの川越駅からも、6キロ離れている。お世辞にも“いい立地”とは言えない場所で独立開業した岩本和人さん(40)。その無謀とも思われる挑戦は、見事に吉と出た。連日の大行列で、グルメサイトでは埼玉県1位に選ばれることもしばしば。ラーメンファンなら知らない者のいない有名店に成長した。
中華そば 四つ葉/埼玉県比企郡川島町伊草298、営業時間:月曜11:00~15:00、水曜から日曜11:00~15:00、17:00~21:00。定休日:火。左隣が父親の営む寿司屋だ(筆者撮影)

中華そば 四つ葉/埼玉県比企郡川島町伊草298、営業時間:月曜11:00~15:00、水曜から日曜11:00~15:00、17:00~21:00。定休日:火。左隣が父親の営む寿司屋だ(筆者撮影)


 なぜ、岩本さんは川島町を選んだのか。その答えは明確で、「家を継ぐため」だ。

 実家は川島町で「宝船」という寿司屋を営んでいる。だが、生もの嫌いの岩本さんには、寿司屋を継ぐという将来が見えなかった。趣味でラーメンの食べ歩きを続けているうちに、「ラーメンで家を継ぐ」という選択肢を見つけた。

 12年間の修行を経て、寿司屋の宴会場だった場所を改装し、2013年6月「四つ葉」をオープン。父親の寿司屋も隣で営業をしている。ただ並んでいるだけではなく、なんと、「四つ葉」ではラーメンを食べながら、「宝船」のお寿司も注文できるのだ。これがまた新しいと評判になった。

「たまたまではありますが、他ではできない戦略ですよね。シンプルなラーメンなので、お寿司が合うんですよ」(岩本さん)
14年3月に初来店した際に頼んだ「まぐろ丼」(筆者撮影)

14年3月に初来店した際に頼んだ「まぐろ丼」(筆者撮影)


 筆者が14年3月に初めて「四つ葉」を訪れた時は、ラーメンと一緒にマグロ丼を注文してみた。鶏と生醤油の甘みのあるスープにマグロと酢飯がよく合うのだ。父の作るお寿司とコラボしてしまう新しい発想には感心しきりである。

 大先輩である父の背中を見ながら、遠方から来てくれるお客さんに喜んでもらえるよう、日々味をブラッシュアップしている岩本さん。生産者の元へ食材を見に行くなど、理解をさらに深めるようにしているという。

「生産者の方にお会いすると、ものすごい情熱をかけて食材を作っていることがわかります。大切な食材を自分に分けていただいているわけです。食材の美味しさが伝わるラーメンを作って、生産者の方も評判になるような一杯にしたい」(岩本さん)

 郊外にお店を出したからこそ磨かれていったラーメンは、今日もお客さんの舌を喜ばせている。そんな岩本さんが愛するのは、「四つ葉」とは真逆の“大人の魚介豚骨ラーメン”だった。


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