「GIGAスクール」以前からICT活用授業の先進事例を作ってきた近畿大学附属高校(写真:近畿大学附属高校提供)
「GIGAスクール」以前からICT活用授業の先進事例を作ってきた近畿大学附属高校(写真:近畿大学附属高校提供)

 今、人類は猛スピードでAI時代に突入している。子どもたちが巣立つのは、今とは価値観も働き方も大きく異なる社会だ。そんな子どもたちに何を教えればいいのか? AERA 2023年6月5日号の記事を紹介する。

【AIの個別指導の様子はこちら】

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 生成系AIの利用について議論が重ねられるなかで、教育現場でAIがどう役立つかが分かり始めてきた。世界経済フォーラムのレポートはAIをうまく活用すれば教育を生徒一人一人にパーソナライズでき、教育機会が公平になる、と指摘している。

 これまで教育現場では、無理に平等を貫いた結果、学習ペースが速く退屈する生徒や、逆に遅く脱落する生徒がいた。

 生徒にはそれぞれ学び方のクセがある。しかし通常学級では、1人の教員で数十人の生徒に教えなければいけない負担から、一律の教育をせざるを得ない。そのため、クセの強い生徒や学習障害の生徒なども教室では部外者として扱われがちだ。ここに、教育を補助するツールとしてAIが介入すれば、生徒個々の能力や学習方法に合わせた個別指導が実現する可能性がある。

 先日、そんな理想の教育の未来像を実践して話題になった人物がいる。子育て漫画『ニブンノイクジ』などの作品のある夫婦2人組の漫画家「うめ」の小沢高広さんだ。

 今年3月、12歳の次女が「小学校生活で一番心に残った思い出」という作文を書けずにいる様子を見た小沢さん。ChatGPTを「家庭教師」に仕立てるプロンプト(指示)を与え、それを次女に渡した。最初はChatGPTに「(思い出が)いろいろあって(何を書いたらいいか)わからない」と答えていた次女に、ChatGPTは「大丈夫です!一つずつ考えていきましょう」「6年生の音楽会で、どんな演目を披露しましたか?」と丁寧に質問を繰り返す。次女は音楽会に備えてピアノの鍵盤にドレミのシールを貼って一生懸命練習したこと、嫌いだった音楽が初めて好きになったことなどを答えていくうちに頭の中が整理されていき、10分ほどやりとりをしたところで、「あとは書けそう」と机に向かい、作文を仕上げた。

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