小学校で英語が必修化されて3年。中学英語も内容が刷新され、習う英単語は倍増した。コミュニケーション重視の教科書や指導法で英語力はつくのか。AERA 2023年5月15日号より紹介する。
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新学期が始まり、中学1年の息子の英語教科書を開いた都内在住の女性。「Unit 1」の冒頭ページに違和感を抱いたのは、「小学校の単語」という欄があったからだ。そこにはnew, friendの2語が、ページをめくるとhow, hungry, drinkなど17語が並んでいる。これらの単語は「既習」として扱われているらしい。しかし小学校では、単語の暗記が宿題に出されたことはない。子どもにしても、覚えている英単語はせいぜい数語。これはどういうことなのか。
学習指導要領の改訂により、2020年度から公立小学校で英語の授業が必修化された。現在3、4年生は週に1コマ(年間35コマ)、5、6年生は週に2コマ(年間70コマ)の授業が行われている。
■中学で習う単語は激増
文部科学省は「小学校高学年外国語の目標」として、「アルファベットの大文字、小文字の読み書きができること」「語順を意識しながら簡単な語句や基本的な表現の書き写しができること」などをあげている。中学校へ進学する前に、英語の基礎的な学習を終えることが前提となっているのだ。
小学校の英語必修化に伴い、中学英語は学習指導要領も新しくなり、21年度から生徒たちは内容も刷新された教科書で学んでいる。冒頭の女性が手にした教科書も、そのうちの一冊だ。
中学校の英語教育はどのように変化したのだろうか。
武蔵大学教職実践指導員の柏村みね子さんはこう語る。
「中学校で習う単語は激増しました。旧版で1200語程度だった新出単語は、1600~1800語程度に。それに加えて小学校で『習った』とされる約700語が加わります。小学校で定着しないまま中学校に進学する子どもたちが多いため、私たちはこれを『小学校700語問題』と呼んでいます」
問題のこれらの単語は、小学校では、誰がどのように教えているのだろうか。