宇野昌磨(25)/男子1位の291.73点。SPは100.45点、フリーは191.28点でともに1位だった
宇野昌磨(25)/男子1位の291.73点。SPは100.45点、フリーは191.28点でともに1位だった

 昨年12月の全日本選手権でベテランの判断力で優勝した宇野昌磨選手。連覇がかかる3月の世界選手権に向けての思いも語った。AERA 2023年1月23日号の記事を紹介する。

【3月の世界選手権の代表選手はこちら】

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 北京五輪が終わり、新たな4年の幕開けとなる今季。宇野昌磨(25)にとって昨年12月の全日本選手権は、ベテランの経験を生かす大会となった。宇野が目標としたのは「その時のコンディションに合わせて力を出す」という考えだ。世界王者として安定した結果を出していくためには、がむしゃらにぶつかるのではなく、経験に基づく状況判断が重要だと考えた。

 ショートプログラム(SP)では、その判断力が光った。本番朝の公式練習では、新調した衣装で練習すると、ジャンプが本調子ではなかった。

「氷の感触が違ったのか、コスチュームが動きにくかったのか、できない理由が複数ある。とりあえず選択肢を潰せれば」

 そう考えると、本番は以前の衣装に変更。6分間練習では4回転はまずまずだったが、満足せず、こう判断した。

「氷から上がって本番また滑る時にはできないと感じました。この氷はスピードが出ないので、無理に出そうとして力むと失敗する。スピードを出さない中で跳ぼうと考えました」

 本番であえてスピードを落とすというのは、演技面の評価を考えた時に勇気のいる判断だ。しかし氷のコンディションを含めて判断し、SPは2本の4回転を決めてパーフェクト。100.45点をたたき出した。

「いかに跳ぶかをずっと考えていたので、プログラムに気持ちが入ったかというと、そうでもなかった。ただ、これが今日できる最高の演技でした」

 対応力について自信がついたかと質問されると、こう返した。

「自信をつける、つけない、というところに僕はもういません。自分が成長するためにどんな選択をするべきか、真剣に試合と向き合えば自然についてきます」

■「まだまだ成長します」

 フリーも、落ち着いた判断で乗り切った。演技前、他の選手の演技を見守り、こう感じた。

「多くの選手の状態、氷の感触を見ると、4回転サルコーは失敗の可能性が高い」

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