人口減少が続く中、地方で新たな価値をつくりだそうとする取り組みが始まっている(ロイター/アフロ)
人口減少が続く中、地方で新たな価値をつくりだそうとする取り組みが始まっている(ロイター/アフロ)

 人口減少が続く中、地方で新たな価値をつくりだそうとする取り組みが始まっている。AERA 2023年1月2-9日合併号では、島根県立大学准教授でローカルジャーナリストの田中輝美さんが2023年注目の人を紹介する。

【田中さんが選ぶ10人はこちら】

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 日本社会が直面する人口減少に最前線で立ち向かっているのが地方です。今、人口減を食い止めようと様々な施策が行われています。大切なことですが、これから重要なのはそれだけではないと考えています。人口減が当面続くことがデータで明らかになっているからこそ、人口減を前提に、そこに向き合い、価値観をアップデートしながら、どう私たちが幸せに暮らしていけるかを考えていくことです。紹介する10人は、地方で新たな価値をつくりだそうとしている次世代の人たちです。

 中西拓郎さん(34)は、2012年に故郷の北海道北見市にUターンし、クリエーター仲間と19年に一般社団法人「ドット道東」を設立しました。「住むと決めた場所で楽しく生きたい」と掲げて情報発信やブランディング、伴走支援を手掛けています。キーワードは「広域ネットワーク」です。

 地方創生といった場合、自治体の枠の中で「わが町」のことのみ考えがち。しかし、人口やリソースが減ったときに必要になってくるのが、隣接地域との「連携」と「役割分担」。中西さんは「道東」というエリアを設定し、道東内の点と点をつなぎました。22年9月、道東に住む1013人の「道東で実現したい理想」をテーマに集めたビジョンブックを制作。「世界一のおすしやさんになりたい」などの理想が載っています。みんなが夢を語れる場所になれば、地方はもっと元気になります。

 永岡里菜さん(32)が立ち上げた「おてつたび」も、新しいイノベーション。人手不足の地方の旅館や農家と、仕事を手伝う若者をつなげる仕組みです。

 永岡さんは三重県尾鷲市出身で、目立った観光資源のない同市に人が訪れにくいのではないかと感じていました。同じような地方に人が訪れるにはどうすればいいか。一方で都市の若者は繋がりに価値を感じています。そこで「おてつたび」というわかりやすい名前で両者のマッチングを事業化しました。

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