そんな独特の感性から生まれた文章からは、テレビではわからない、ふかわさんの素顔が見えてくる。忙しい中でもエッセイを書くのは、放送では伝わりにくいことも表現したいという欲求が年々増しているからだろうか。
「テレビはマスに向けているので、白か黒かの二元論で語られることが多いんですけど、世の中はグラデーションになっています。その部分を表現する場所として書籍はすごく適していると思うんです」
早いときは朝6時に起きてウォーキングに出かけ、朝食をとってパソコンに向かう。
「テーマは頭の中にいっぱいあるんですけど、そのモワモワした言葉の群れみたいなものを、綿あめを作るときのように割りばしでくるくると巻き取って原稿が出来上がる感じなんです」
文章は曲作りと同じようにリズムと緩急を大事にして、章ごとにふさわしいテンポを考える。思いのままに書くのは楽しいが、8合目から完成までの仕上げの作業には神経をすり減らす。その生みの苦しみが執筆には必要だと話す。出来上がったこのエッセイ集は、
「ひとりでいることに不安を抱えている人がつかまれる浮輪になればいいなと思っています。そんなに大きな浮輪じゃないんですけど」
(ライター・仲宇佐ゆり)
※AERA 2022年12月19日号