ダボス会議の若者版と言われる地球規模の若者サミット「One Young World」(OYW)に、日本からも若者らが参加した。核根絶を訴える長崎の若者の派遣を支援したのはアミューズだ。同社の大里洋吉会長に、OYWに派遣した狙いや平和への思いを聞いた。2022年12月5日号の記事を紹介する。

*  *  *

──以前から核兵器や戦争などに強い関心を持ってきたという。なぜなのか。

 僕は8人きょうだいの末っ子。戦後生まれなので戦争は知りません。23歳上の長兄は大正生まれで戦争に行きました。兄からものすごく影響を受けましたね。実家は青森のコメ問屋です。

 兄は早稲田大学の2年の時、学徒動員で海軍に配属され、特殊潜航艇の乗組員でした。魚雷を装填(そうてん)した潜航艇が、オーストラリアのシドニー湾に潜入して攻め込んでことごとく撃沈されたりしている。自分も部下たちに死なれているんです。

「戦争って定期的に起きるんだよ」と兄は言っていました。そもそも太平洋戦争は、日本がなんの計算もなくアメリカに仕掛けたもので、愚かしいと。誇るべき祖国のために働いて、命を懸けてかえってきた兄が、「負けたから言っているんじゃない。この国の政治をやっている政治家がバカなんだ」と言っていましたね。兄は大卒(繰り上げ)だから、いきなり将校になる。すると、自分より年上の一等兵や二等兵を殴らないといけない。ものすごく嫌だったと。戦争を憎んでいましたね。その影響がとても大きいでしょうね。

──長崎の2人をOYWに派遣した狙いはどこにあるのか。

 核兵器禁止条約が国連で採択され発効しました。そして第1回の締約国会議が今年6月、オーストリアのウィーンで開かれた。日本はアメリカに気を使って賛成に回れなかったのかもしれないけど、オブザーバーとしては参加できる。だのに日本政府が派遣団を出していない。とても残念です。誰かOYWに行き、被爆国のメッセージを伝えてほしいと。それで2人に行ってもらったわけです。

次のページ