山本憲将(やまもと・のりまさ)/SMBC日興証券 アセットマネジメント・保険マーケティング部長。1994年にSMBC日興証券(当時は日興證券)入社。資産運用畑を中心に28年にわたり世界の株式市場の浮沈を見てきた大ベテラン(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
山本憲将(やまもと・のりまさ)/SMBC日興証券 アセットマネジメント・保険マーケティング部長。1994年にSMBC日興証券(当時は日興證券)入社。資産運用畑を中心に28年にわたり世界の株式市場の浮沈を見てきた大ベテラン(撮影/写真映像部・高橋奈緒)

 米国株の投資信託を買うなら「S&P500」か「全米株式」の2択。結論は「どちらもほぼ同じ」だが、細かい違いを知るために徹底比較した。「AERA Money 2022秋冬号」(2022年11月11日発売)から抜粋してお届けする。

【図表】毎月1万円ずつつみたてると、どうなる?

*  *  *

 iDeCo(個人型確定拠出年金)でも、つみたてNISA同様に米国株のインデックス型投資信託(以下、投信)の人気は根強い。米国株の代表的な指数「S&P500」と「全米株式」で迷う人が多いが、組み入れ銘柄の顔ぶれは実のところ、ほとんど変わらない。

 まずS&P500の組み入れ銘柄トップ10は、アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、テスラ、アルファベットなどの巨大ハイテク企業が独占している。

 S&P500に連動する投信で人気が高いのは、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」だ。

 主要ネット証券のiDeCoではSBI証券、松井証券、マネックス証券で買える。auカブコム証券、楽天証券のiDeCoでは買えない。

 ちなみにiDeCo口座では買えないものの、信託報酬0.0938%の「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」も人気だ。

※iDeCoで米国株の投資信託をつみたてたいなら「S&P500」か「全米株式」。それぞれ毎月1万円ずつつみたてた場合の過去のシミュレーション結果がこの表だ。それぞれ毎月1万円ずつ、つみたてた場合のシミュレーションなので企業年金のない会社員がiDeCoの満額2万3000円でつみたてると、この試算結果の2.3倍になる。試算はスタート時に1万円を投資し、各月末に1万円ずつつみたてていったと仮定(最終月末は投資せず)。設定日より前の期間は各投資信託が指標とする指数で試算。指数そのものが存在しない期間は「―」とした。つみたて期間…1年間/ 2021年8月末~、5年間/ 2017年8月末~、10年間/ 2012年8月末~、15年間/ 2007年8月末~、20年間/ 2002年8月末~(いずれも最終月は2022年8月)。「iDeCoではどこで買える?」は主要ネット証券5社で買えるところを掲載。データは2022年8月31日現在。データ提供:SMBC日興証券
※iDeCoで米国株の投資信託をつみたてたいなら「S&P500」か「全米株式」。それぞれ毎月1万円ずつつみたてた場合の過去のシミュレーション結果がこの表だ。それぞれ毎月1万円ずつ、つみたてた場合のシミュレーションなので企業年金のない会社員がiDeCoの満額2万3000円でつみたてると、この試算結果の2.3倍になる。試算はスタート時に1万円を投資し、各月末に1万円ずつつみたてていったと仮定(最終月末は投資せず)。設定日より前の期間は各投資信託が指標とする指数で試算。指数そのものが存在しない期間は「―」とした。つみたて期間…1年間/ 2021年8月末~、5年間/ 2017年8月末~、10年間/ 2012年8月末~、15年間/ 2007年8月末~、20年間/ 2002年8月末~(いずれも最終月は2022年8月)。「iDeCoではどこで買える?」は主要ネット証券5社で買えるところを掲載。データは2022年8月31日現在。データ提供:SMBC日興証券

 S&P500と並んで支持されているのは、米国市場に上場する約4000社(米国上場企業のほぼすべて)に投資できる全米株式の投信だ。

 iDeCoで買えるのは「楽天・全米株式インデックス・ファンド」のみで、取り扱い証券会社も松井証券と楽天証券の2社に絞られる。

 組み入れ銘柄トップ10はS&P500とほぼ変わらないが、各銘柄の組み入れ比率はS&P500より小さい。その分、今後急成長するかもしれないダイヤモンドの原石のような企業も幅広く組み入れているのが特徴だ。

 さて、どちらが儲かりそうか。SMBC日興証券の山本憲将さんが超人気の2本の投資信託をそれぞれ月1万円ずつつみたてた場合の試算をしてくれた。

「過去10年間のパフォーマンスを見ると、S&P500の運用成績が全米株式を上回りました。10年間で、つみたてたお金は120万円です。

 これが『eMAXIS Slim米国株式(S&P500)』は291万2667円、『楽天・全米株式インデックス・ファンド』は276万3602円になっていました。

 ここ10年間でS&P500も全米株式も元本が2倍以上に増えていたわけですが、S&P500の成績のほうが率にして12.4%、金額にして15万円ほどいい結果になりました」

 全米株式は、指数そのものの算出開始が遅いため15年、20年での検証はできなかったが、長期になるとこの差が縮まっていくだろう。決して全米株式がS&P500より劣っているわけではない。

著者プロフィールを見る
中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

中島晶子の記事一覧はこちら
次のページ
「S&P500」に暗雲