英国のジョンソン首相との会談後、内外記者会見で語る岸田文雄首相=2022年5月5日、ロンドン市内のホテルで
英国のジョンソン首相との会談後、内外記者会見で語る岸田文雄首相=2022年5月5日、ロンドン市内のホテルで

 岸田内閣の「資産所得倍増プラン」。コアになるのは税制改正要望に盛り込まれたNISAの拡充だ。制度恒久化や限度額引き上げは実現するのか。「AERA Money 2022秋冬号(アエラ増刊)」から抜粋してお届けする。

【写真】解説してくれた深澤祐介さん

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 岸田文雄首相が「資産所得倍増プラン」をぶち上げたのは2022年5月5日。外遊先のロンドンで、「インベスト・イン・キシダ」とスピーチし、投資促進による経済再生を宣言した。これを受け、金融庁は8月末に公表した「金融行政方針」にNISAの抜本改革を掲げた。2023年度の税制改正要望では年間投資枠の拡大や制度の恒久化などを盛り込んだ「NISAの抜本的拡充」案をトップに据え、実現に強い意欲を示した。

 NISAがスタートしたのは2014年1月。株価浮揚に力を入れる故・安倍晋三首相の看板政策のひとつだった。

 当初は2023年末までの時限措置とされたが、制度創設が正式決定した2013年時点で既に恒久化を求める声が強かった。金融庁が税制改正要望に盛り込んだNISAの抜本的拡充は9年越しの懸案だったのである。

 金融庁はNISAの拡充について「刷新」と表現している。決定済みの事項でもリセットボタンを押すという強い決意が込められた官庁用語だ。

 2023年12月で終了する「一般NISA」に替わって2024年から開始予定の「新NISA」を白紙撤回してでも、拡充をやり遂げたい様子が伺える。

 ただ、税制改正要望は各省庁が国家予算を預かる財務省に提出する「お願い」のようなものだ。本当に実現させるまでには、税制審議会を通過させ、毎年12月にとりまとめる税制改正大綱に載り、さらに専門家による審議会で細則を詰め、国会審議––––と、いくつものハードルが待ち構える。

 まだ税制改正要望段階なのに、SNSでは「祝NISA恒久化、限度額引き上げ」と祭りの様相を呈していたが、そう話は甘くないのである。

 今、「NISA恒久化」と書いた。この表現は非常に曖昧で、ネット上でもかなりの誤解が見られる。現在、一般NISAは最長5年、つみたてNISAは2023年にスタートした人で最長20年、つみたてられる。

 これを「私は今30歳だけど恒久化されたら65歳まで35年間、つみたてよう。そうすればウン千万円の老後資金が……」などと、恐らく間違った解釈をしているのだ。

 国がいう恒久化とは、現状2028年までの新NISAと、2042年までのつみたてNISAの「最終投資年」を廃止して、誰でも、いつ始めても5年ないし20年(正確な期間は未決定)、非課税で投資できるようにするという意味と思われる。

 すべては今年12月以降、徐々に明らかになっていくが、30年、40年もの非課税投資を国が許可するとは思えないのだが、どうだろうか。

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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NISAの投資上限枠はどうなる?