やすなみ・きょうこ/「きょうこ先生」として新聞や雑誌で連載も持つ。近著に『中学受験にチャレンジするきみへ』(大和書房)(写真=本人提供)
やすなみ・きょうこ/「きょうこ先生」として新聞や雑誌で連載も持つ。近著に『中学受験にチャレンジするきみへ』(大和書房)(写真=本人提供)

 中学入試に向け、親も子も気持ちの起伏が激しくなる今の時期をどう過ごす? 「きょうこ先生」こと、中学受験専門カウンセラー・算数教育家の安浪京子さんが、「わが子が幸せになる中学受験」をテーマに語った。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。


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 家庭教師の依頼や相談が一番多くなるこの時期を、私は“魔の月”と呼んでいます。夏休みは夏期講習などで長時間勉強する姿に「とにかくエールを送ろう」という気持ちになる。ところが、学校が始まると同時に、塾では平常授業に加えて特訓授業が始まり、家庭で勉強できる時間が激減します。加えて、毎週のように各地で大型模試が実施され、過去問提出の指示も出始めると、常に点数や偏差値、判定といった数字を突き付けられます。「残された期間は短いのに課題は山積み、やりたいこともたくさんある、しかも数字も届いていない……」となると、焦りや不安、いら立ちが最高潮となり、特に親が自分の感情を抑えられなくなるのです。


 しかし、この時期の子どもに目を向けてみれば、学校の始まりと同時に、塾は最多忙期に突入。模試で思うような結果も出ず、身体も心も疲れた子どもが「受験をやめる」と言い出すのもこの時期に増えます。まずは子どもの訴えに耳を傾け、生活ペースを見直し、取り組む内容に優先順位をつけて無駄な勉強をそぎ落とし、子どもの睡眠時間と体力と気力を確保しましょう。そして、これからは模試ではなく志望校の過去問で点数が取れるように持っていくことが大切と親子で肝に銘じましょう。


 親が自分の心を乱さないために知っておくべきいくつかの「アタリマエ」があります。まず「成績の乱高下はアタリマエ」。今後の模試の成績は、学力以外のさまざまな要素に大きく左右されます。結果が悪かった時は、まず体調と精神状態を振り返り、次回の模試は元気に向かえる方法を一緒に考えましょう。間違えた問題の振り返りはそれからです。

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