元朝日新聞記者 稲垣えみ子
元朝日新聞記者 稲垣えみ子

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 知り合いの居酒屋で時々まかない作りをさせて頂いている。きっかけは雑談。「そんなことしてくれる人がいたら嬉しい」という店主の冗談めかした一言を聞き逃さず、思わず「やってみたい!」と口走ったのだった。だって「まかない」って憧れません? プロが舞台裏で食べる料理ってだけでもドキドキ。お金じゃ買えない特別な感じが妙に美味しそうだ。で、それを自分が作る! こりゃ神をも恐れぬヤバい事態じゃないですか。

 ってことで、のこのこ出かけて行ったわけです。

 いやいや~楽しいことこの上なし!

 無論、素人ゆえ大した料理など出来ぬ。っていうか一汁一菜生活なんでそれしかできぬ。とりあえず野菜くずや魚の頭など適当に放り込んで汁を作り、あとは炒め物一品とサラダ一品程度。でも普段は一人で作って一人で食べる生活なので、仕込み中のスタッフに混じって料理するだけでも新鮮だ。味付けに自信がないのでスタッフに味見もしてもらう。だってそうしておけば少なくとも一人は「おいしい」と言ってくれるはず。大人のリスク管理である。

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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