学研の社内にはかつての「科学」の付録の数々が展示されている。6学年分の「科学」と「学習」を合わせ最盛期には670万部を発行していた(撮影/植田真紗美)
学研の社内にはかつての「科学」の付録の数々が展示されている。6学年分の「科学」と「学習」を合わせ最盛期には670万部を発行していた(撮影/植田真紗美)

 サイトには「手足を進化させ陸にあがったのに、すぐ諦めて水中へ戻ってしまった魚がいた」「呪術廻戦っぽい数学用語『無限級数展開』とは? 五条悟の術式から解説」など簡易な言葉遣いと目を引くタイトルが並ぶ。オリジナルのビジュアルがつく記事もある。

 ナゾロジーの記事が目指しているものについて、編集長の海沼賢さんはこう説明する。

「科学の話は聞いてもなかなかイメージできないことが多いと思うんです。絵として浮かばないと、理解できず右から左に流れるだけになってしまう。まずは何かしらのイメージを作ってもらうことを目標にしています」

■「検証」は科学の手続き

科学メディア「ナゾロジー」/身近な科学現象から最先端の研究まで多ジャンルの記事を扱う。オリジナルのビジュアルで解説する記事も(https://nazology.net/) (c)nazology
科学メディア「ナゾロジー」/身近な科学現象から最先端の研究まで多ジャンルの記事を扱う。オリジナルのビジュアルで解説する記事も(https://nazology.net/) (c)nazology

 そのためには、専門的な話を身近な比喩に置き換えることもある。わかりやすく形を変換する過程で、主観が入ったり、省かれる部分が発生したりするが、そこが記事作りの難しさであり面白さでもあるという。

 読者から指摘されて修正することもあるが、それもいとわない。読んだ人が自分なりのイメージに変換し相互に話し合いながら誤差を修正していくのは、言ってみれば「科学の手続き」でもあるからだ。そのためにも、記事には引用した論文の情報など検証可能な情報を必ずつける。

「よく勘違いされがちですが、論文というのは、真実を伝えるものではなく、あくまで『発見を伝える』もの。検証のための方法を示していることが大事で、それがあれば、他の人が同じように実験して『再現性はなかった』と指摘することができる」

「エセ科学」と言われるものが問題なのは、検証可能なデータを示さないからだと海沼編集長はいう。データがなければ、反論しようにも反論できない。

 もともと、北陸先端科学技術大学院大学の知識科学研究科で学んだ経歴を持つ海沼編集長。知識科学とは従来の学問領域の壁を越えて分野横断的に知識の交流を図ろうというもので、海沼編集長はナゾロジーを通じて、いろんな分野に興味を持つ人が増えてくれたらいいと考えている。

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