円安に救われているとはいえ米国株の不調は事実。今後の下落の可能性は? 20年、30年の下落ランキングはよく見かけるが、1世紀の検証は貴重だ。AERA 2022年8月15-22日合併号の記事から紹介する。
【全世界株式MSCI ACWI 34年のワースト5はこちら】
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米国の株価指数S&P500は6月16日、終値ベースで年初比23%の下落を記録した。ただS&P500が下落してもドル高・円安が進むと、円建て換算ではそこまで下がらない。日本人が買うS&P500の投資信託は円建てなので、年初からのトータルリターンはマイナス4.7%にとどまる(6月30日時点、eMAXIS Slim米国株式<S&P500>)。ドル建ては同期間だとマイナス19.13%(同、バンガードS&P500ETF<VOO>)だ。
こうした“円安サポート”がいつまで続くかは不透明。今月初旬のペロシ米下院議長の訪台で為替も動き始めた。株価はどこまで下がる可能性があるのか。
過去20年、30年の下落率に関する記事はよく見るが、本誌は「過去100年」の検証を試みた。この期間だと、2008年のリーマン・ショックはもちろん、1980年代後半のブラック・マンデー、73年のオイル・ショックも視野に入る。
取材は難航した。100年ともなると、詳細なデータを日々管理している金融機関が見つからず……。ようやく辿り着いたのがイボットソン・アソシエイツ・ジャパン。77年に米国で設立され、日本法人は00年から。資産配分をはじめとする投資助言や、コンサルティングサービスを展開している。
「S&P500が現行の500銘柄方式で算出を開始したのは1957年。イボットソンではそれ以前の推移についても、指数の連動性を壊さないかたちで独自に算出、26年1月からのデータを所有しています」(同社の小松原宰明=ただあきさん)
■世界恐慌がワースト1
100年には少し足りないが、いただいた96年分のデータを元にグラフ化した(上のチャート、ピンク色の折れ線)。あまりに長期すぎて、どの局面の下落幅が大きいかを見極めづらいので、谷底の深さ(下落率の高さ)がわかるようにアレンジ(茶色の折れ線)。ワースト5の断トツ首位、84%暴落を記録したのは29年の世界大恐慌だ。米国の株価暴落に端を発し、企業倒産と失業者増加の連鎖を引き起こした。