リーグ戦再開後も好調をキープしている。特に印象深いのは6月24日からの巨人3連戦(神宮)だ。初戦に2本のアーチを放ち、16-6で大勝。2戦目は5-19と大敗したが、3戦目は同点の八回1死一、三塁でバックスクリーンに26号決勝3ラン、11-10で壮絶な打撃戦を制し、巨人は自力優勝の可能性が消滅した。メディアやSNS上では村上の神がかった活躍に、「村神様」というキーワードが発信されるようになった。

 だが、謙虚な姿勢を失わない。試合後のお立ち台では、「(初回に)しょうもないエラーをしてしまったので、何とか取り返したいと思って打席に立った。(山田)哲さんが右打ちしてくれて僕に楽に打席に立たせてくれたので、哲さんのおかげです」とつなぎ役に徹した先輩への感謝を忘れなかった。

セ・リーグの貯金・借金の推移(AERA2022年7月18-25日合併号より)
セ・リーグの貯金・借金の推移(AERA2022年7月18-25日合併号より)

コンディションを重視

 低迷していたチームを変えたのは高津臣吾監督(53)の功績も大きい。就任1年目の20年は41勝69敗10分。チーム防御率4.61はリーグワーストだった。先発陣を見ると、現在32歳の小川泰弘がチーム最多の10勝(8敗)で、2位がアルバート・スアレス(21年限りで退団)の4勝(4敗)と頭数がそろわずに崩壊していた。21年の開幕前にトレードで同26歳の田口麗斗(かずと)を巨人から先発要員として獲得したものの、コマ不足は否めなかった。

 この戦力では厳しい──。評論家たちもBクラス予想が多い中、高津監督は斬新な采配で下馬評を覆す。5、6人で先発を回すという従来の枠組みにとらわれず、コンディション重視の起用法を貫いて各投手の能力を発揮させた。現在21歳の奥川恭伸、同25歳の高橋奎二(けいじ)ら成長期の若手たちは好投しても中10日以上の登板間隔を空ける。規定投球回数に到達した投手、2桁勝利を挙げた投手は共に一人もいない。だが、救援陣に大きな負担がかかったわけでもない。3連投を極力避け、役割分担を明確にさせることで精神的負担も減らした。6年ぶりのリーグ優勝を飾ると、日本シリーズでも4勝2敗でオリックスを下して日本一へ一気に駆け上がった。

 今季も救援陣は安定している。7月5日時点で、救援陣のチーム防御率はリーグトップの2.53。田口は防御率0.00、清水昇(25)は1.25、今野龍太(27)は1.90、梅野雄吾(23)は0.89、守護神・マクガフ(32)は1.16と、質、量共に12球団トップクラスだ。

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