ヤクルトの村上宗隆
ヤクルトの村上宗隆

 プロ野球ヤクルトが2リーグ制以降では最速の優勝マジック「53」を点灯させた。2019、20年とセ・リーグ最下位に沈んだチームが快進撃を続ける理由を探る。AERA2022年7月18-25日合併号の記事を紹介する。

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 短期間でここまで強くなるチームは極めて珍しい。セ・リーグ2連覇を狙うヤクルトだ。7月2日のDeNA戦(神宮)でサヨナラ勝ちし、1950年の2リーグ制導入以降では史上最速の優勝マジックが点灯。5日時点で「51」だ。交流戦はパ・リーグ全球団にカード勝ち越しを決め、14勝4敗で完全優勝。5月14、15日の広島戦(マツダスタジアム)から球団新記録の14カード連続勝ち越しを決めるなど、2019年から2年連続最下位だったチームが圧倒的な強さを見せている。

「昨年のリーグ優勝、日本一が大きな自信になっている印象を受けます。劣勢でも動じずにはね返す強さがある。若いチームなので成功体験を積み重ねることで成長しています。象徴的な存在が村上宗隆(22)です。4番でコンスタントに打っているから、他の選手も勢いに乗れる。今年は三冠王も十分に狙える。スキがない打者で本当に厄介です」(他球団のスコアラー)

 今季の村上には大きな負担がかかっていた。開幕10試合で打率3割4分3厘、4本塁打、10打点と絶好調だったサンタナ(29)が下半身のコンディション不良で4月7日に登録抹消。左半月板のクリーニング手術を受け、長期離脱した。3番を打つ主将の山田哲人(29)も調子が上がらない。交流戦は打率1割5分3厘、5本塁打、7打点。59打数で22三振も喫した。

村上宗隆(ヤクルト)の打撃成績(AERA2022年7月18-25日合併号より)
村上宗隆(ヤクルト)の打撃成績(AERA2022年7月18-25日合併号より)

窮地を救った村上宗隆

 この窮地を4番が救う。5月24日の交流戦開幕戦・日本ハム戦(神宮)でサヨナラ2ランを放つと、6月11日のソフトバンク戦(ペイペイドーム)では2ラン、逆転満塁アーチと2本塁打、6打点の活躍で交流戦優勝を決めた。6月1日のロッテ戦(神宮)では4打席全て四球(二つが敬遠)で出塁するなど全選手で交流戦最多の18四球。打率3割5分1厘、6本塁打、13打点で、出塁率5割7厘、長打率7割2厘、OPS(出塁率+長打率)は1.208と驚異的な数字が並んだ。6本塁打は勝ち越し2本、逆転2本、サヨナラ1本と殊勲打が多く、交流戦MVP(最優秀選手)にも選ばれた。

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