AERAの取材に答える東京都医師会・尾崎治夫会長(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
AERAの取材に答える東京都医師会・尾崎治夫会長(撮影/写真映像部・高橋奈緒)

 新型コロナウイルスの感染拡大による医療体制の逼迫と危機感は、記憶に新しい。今後医療逼迫が再び起こる可能性はあるのか。今後新型コロナウイルスはどのような位置づけになっていくのか。尾崎治夫・東京都医師会会長に聞いた。

【4回目接種の効果の推移はこちら】

※記事前編<<アクリル板で空気が滞留して「逆効果」も? 都医師会会長に聞く効率的なコロナ対策>>から続く

*  *  *

■重症者増の報告「今のところない」

Q:流行中のウイルスよりも感染が広がりやすいとされるBA.5やBA.2.12.1という、オミクロン株の別の系統への感染者が都内で確認されました。こういった系統への置き換わりが進み、新規感染者が再び増えている国もあります。今後、国内の流行状況はどのように推移していくと予想できるでしょうか?

尾崎:突然、重症化しやすい変異株が登場するような不足の事態が起きなければ、感染力のより強い変異株が入ってきて、新規感染者数がまた増加傾向になったとしても、第5波のように重症患者が大幅に増えて医療崩壊が起きるような状況にはならずにすむと予想します。

 BA.2.12.1がすでに流行しつつある米国などから、重症患者が増えたという報告は今のところありません。

 国内では、12歳以上の人のワクチンの3回目接種や、60歳以上の高齢者と基礎疾患のある人への4回目接種が進みつつあります。

■医療体制進化した

 また、第5波では、重症患者が急増して一部の地域で病院の受け入れが難しくなっただけでなく、感染者の把握や自宅療養する感染者の健康観察までの多くを保健所が担っていたために、保健所が対応しきれなくなって自宅で感染者が亡くなるような事態も発生しました。

 第5波の反省から、感染者の把握や自宅療養中の感染者のフォローを、保健所だけでなく、開業医を含めた医師がもっと担うようになり、保健所の負担がかなり軽減されたと思います。

 第5波のころにはまだ保健所とのやりとりにファックスがかなり使われていたのですが、オンラインへの切り替えを進めました。少なくとも都内では今、新型コロナウイルス感染症の検査や診療を担う医療機関のほぼ100%が、オンラインで感染者情報を登録しています。自宅療養中の感染者の健康観察も、オンライン化が進められています。

 しかも現在は、高齢者や基礎疾患がある人など、重症化リスクのある人が飲むことで重症化を防ぐ可能性の高い、2種類の経口薬が緊急承認されていて、使えるようになっています。発症から5日以内に飲まなければいけない、持病のために飲んでいる薬の種類によっては飲めないといった制約はありますが、これらの経口薬でかなり重症化を防ぐことができています。

 こういったいろいろな変化を考慮すると、第5波の時のような事態には陥らないだろうと考えられます。

次のページ
新型コロナはインフルエンザのようになる?