金融庁のつみたてNISA対象インデックス投信、全183本を独自調査。日本人には米国株が人気だが、実のところ現地米国の株価は下落している。AERA 2022年5月30日号の記事から紹介する。
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「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、インデックスファンドとして初の純資産総額1兆円突破」。このリリースが出たのは今年2月10日のことだ。信託報酬=運用コストが0.0968%と激安な投資信託(以下、投信)の“1兆円乗せ”は話題になった。
「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は直近で1兆1千億円台になりました。純資産総額はトヨタやソニーのような個別株でいうと時価総額のようなもの。投信の“中身”(株式や債券、海外の場合は為替も加味)が上がり、投資家の資金が集まり続けると、純資産総額も右肩上がりになります」(三菱UFJ国際投信デジタル・マーケティング部の野尻広明さん)
■営業推奨なしで売れた
投信といえば証券会社の営業担当者が顧客に薦めて買ってもらうパターンが主流だった。実は現在も信託報酬1~2%の投信が大半で、低コスト投信は全体(約6千本)の5~6%しか存在しない。そして低コスト投信はネット証券を中心に販売されており、おすすめしてくれる営業担当者はいない。つまり一般の人が自分の意思でお金を出し、中身の株価も上がった結果が1兆円という巨大な純資産総額につながっているわけだ。
eMAXIS Slimに限らず、ここ数年は米国株の投信を買う人が急増している。2018年に始まった「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」の動向を見てみよう。つみたてNISA対象の投信の中でインデックス型183本の純資産総額をすべて調べ、上位からランキングしてある。
トップ3はすべて米国株100%の投信だ。4位には世界中の株を詰め合わせた「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」がランクイン。こちらの米国株比率は約6割で、米国一辺倒の投資にリスクを感じる人に選ばれている。全世界株式=オール・カントリーを略した“オルカン”という呼び方も浸透。