AERA 2022年5月30日号より
AERA 2022年5月30日号より

「その理由の一つは『円安』です。日本のS&P500の投信は、組み入れ銘柄の株価、配当金などを日々の為替レートで円換算して基準価額が算出されます。ご存じの通り、3月から4月にかけてドル/円レートは円安に進み、一時130円台をつけました。為替分が値上がりに反映されている形です」

 つまり日本人が一般的に投信を通じて見ているS&P500は「円建て」ということ。裏を返せば、現状の為替が円高方向に振れると逆の現象が起きる。米国株の株価が下がり、さらに円高ならダブルパンチ。株価が上がっていたとしても円高では、投信の基準価額はたいして上がらない。つい1年と少し前、21年の1月末時点では1ドル=105円を割っていた。ここからの揺り戻しが怖い気もする。

のじり・ひろあき(35)/三菱UFJ国際投信デジタル・マーケティング部チーフマネジャー。投信運用に精通する「投信博士」的な存在
のじり・ひろあき(35)/三菱UFJ国際投信デジタル・マーケティング部チーフマネジャー。投信運用に精通する「投信博士」的な存在

■積み立てをやめない

 もっとも、ゴールデンウィーク前から5月にかけて株価下落はさらに進み、日本のS&P500投信(円建て)の基準価額も下がっている。投資上級者にいわせれば「この程度の下げは、そよ風くらいのもの」だがビギナーは精神的につらいだろう。

 投信の積み立ては、同じ金額でも安いときに多くの口数を買い、高いときに口数を少なく買うことで将来の大きな果実を得られる仕組み。ここ数年、米国株は調子が良すぎた。長期投資なら積み立てをやめないことが何よりも大切だ。(ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子)

AERA 2022年5月30日号

著者プロフィールを見る
中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

中島晶子の記事一覧はこちら