発熱と解熱 3度目となれば もうええわ(イラスト/サヲリブラウン)
発熱と解熱 3度目となれば もうええわ(イラスト/サヲリブラウン)

 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

【イラスト】ジェーン・スーさん

*  *  *

 いやあ、キツかった。3回目のワクチン接種後の副反応です。噂には聞いていたものの、予想以上でした。

 高熱が理由ではありません。それもしんどくはありましたが、熱だけで言えば前回は39・5度まで上がったもの。今回はマックスで38・7度。

 私は子どもの頃から体が丈夫で、あまり発熱しない体質です。ですので、ワクチン接種1回目のあとはビクビクしていましたが、意外と大丈夫でしたね。あら、怠いわねという感じ。2回目もそう。私が接種したワクチンは、モデルナ→モデルナ→ファイザーで、腕の痛みは今回のファイザーが最も少なかったし。

 しかし今回は、繰り返される発熱と解熱にほとほと飽きがきてしまいました。長袖を着ても寒く感じるようになったら、発熱。解熱剤を飲む。しばらくすると、どっと汗をかいて熱が下がる。もう3度目だもの。目新しさゼロ!

 あくまで私にとってですが、初回は発熱自体にイベント性がありましたし、2回目はどこまで熱が上がるのかに少しワクワクもしました。しかし、丸2日間、家から一歩も出ず、発熱と解熱を繰り返すのを3度もやれば、もうええわという気持ちになりますよね。

 ああ、そうだった。私はなにより「飽き」に弱い。朦朧とした頭で、己のサガを思い出しました。会社も習い事も、飽きたらなんでもすぐに辞めてきた私の人生よ。

 残念なことに、発熱には「やめる」のボタンがありません。これがメンタルにきました。まるで、まん延防止等重点措置と第○波が交互になってくるようです。あれにも飽きたなあ。

 と同時に、2日もなにもしないでいると、後半の解熱時には「いつかはやらねば」と後ろめたい気持ちで放置していたあれこれに手を付ける余力も出てきます。「なにもしない」の時間をある程度挟まないと、こうはいきません。

(イラスト/サヲリブラウン)
(イラスト/サヲリブラウン)

 2年前の緊急事態宣言下では、自炊や運動を楽しんだっけ。あの喜びも、あっという間に忘れてしまった。毎日パツパツの生活をしていれば、休みになったからといって、すぐには取りかかれるものでもないことを思い出しました。今回は、クローゼットの中を全部出して、いらない服を捨てました。我ながら元気だな。

 健康体の持ち主という自覚はありましたが、同時に不健康に対する耐性がまるでないことを自覚した週末でした。健康は傲慢のもと。

※AERA  2022年5月2-9日合併号

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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