新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中国。いまも「ゼロコロナ」政策を続けているが、国内外で「行き過ぎだ」との声が上がる。AERA 2022年4月25日号の記事から、自宅に2週間隔離された記者による現地ルポ第2弾をお届けする。

【図】中国各都市のコロナ感染者数と主な対応はこちら

ロックダウンが続く上海では、ボランティアがトラックから配給の食料を運び出していた/4月8日(写真:gettyimages)
ロックダウンが続く上海では、ボランティアがトラックから配給の食料を運び出していた/4月8日(写真:gettyimages)

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■終わりが見えない上海

 瀋陽で隔離生活を送りながら気にしていたのが、以前の勤務地である上海の動向だった。感染拡大が収まらず、広い範囲でロックダウン解除の見通しが立っていない。友人や知人が食べ物の調達に苦労している。

 衛生当局の発表によると、4月13日に上海で確認された市中感染者は2万7719人(うち無症状が2万5146人)にのぼる。中国本土全体の市中感染者の約95%を占めた。

 中国政府は、大規模な検査と徹底した隔離で感染の封じ込めを図るゼロコロナ政策を維持してきた。それでも3月以降、感染力の強いオミクロン株が急拡大した。2020年初頭に湖北省武漢で流行して以来の勢いで感染が広がり、上海では4月に入っても歯止めがかかっていない。

 約2500万人の住民を抱え、中国経済に与える衝撃も懸念してロックダウンに否定的な姿勢だった上海市政府は3月28日、市域を東西に分けた2段階の封鎖に踏み切った。封鎖は4月5日に終わる予定だったが、感染の広がりを受けて全域で解除を見送った。

 11日になり、過去14日間に感染者が確認されなかった地区では、近隣まで外出することを認めると発表した。ただ、広い地域に外出制限が課されたままで、全面的な封鎖の解除がいつになるのかはわからない。

■住民に詰め寄られる

 医療の逼迫(ひっぱく)とあわせ、食料の調達が差し迫った問題だ。各家庭に野菜や肉なども配給されているが、地区ごとに差があり、行き渡らず困窮する人たちの不満は高まっている。

 SNSでは、団地で「物資をよこせ!」と叫ぶ住民や、居住区の出入り口で当局者に抗議する集団など、上海市民とされる動画が出回った。ゼロコロナ政策に反対したり、違和感を表明したりする投稿も少なくない。

「ゼロコロナはすでに信仰になってしまった。信じるか信じないか。議論の余地はない」「このままだと飢え死にする。ゼロコロナじゃなくて、私がゼロにされてしまう」「これまでコロナの経済への影響が大きすぎた。ウイルスと共存する考え方に希望を持つようになった」

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