AERA 2022年3月28日号より
AERA 2022年3月28日号より

 西側諸国の厳しい制裁は、ロシアの通貨ルーブルの暴落をもたらした。為替市場を読み解くと、苦境に陥ったロシアに対して救いの手をさしのべる中国の姿が見えてきた。AERA 2022年3月28日号で専門家が解説する。

【この記事の写真をもっと見る】

*  *  *

 国際的に孤立しているのは、ロシアという国家だけにとどまらず、通貨ルーブルもしかりだ。対米ドル相場では、約2週間のうちに約45%もの下落を記録。対円相場でも、3月11日には1ルーブル=0.86円まで下げ、約1カ月前の半値近くになった。

 ルーブル暴落は、西側諸国の厳しい経済制裁がもたらした。国際決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアの大手銀行が排除され、ルーブルと他国通貨との交換が難しくなった。ロシア中央銀行にも制裁措置を打ち、日米欧の中央銀行などが保有するロシアの外貨準備が凍結された。

 その結果、ロシア中銀は為替介入という切り札を封じ込められ、下落を力ずくで止めるのもかなわなくなった。

 ただ、岡三証券シニアストラテジストの武部力也氏は、その陰で見逃されている動きがあると指摘する。

「(中国の中銀にあたる)中国人民銀行傘下の為替市場運営機関は3月11日、銀行間取引市場における人民元・ルーブルの変動幅制限を1日5%から10%に拡大しました。理由は不明ですが、事実上は人民元が受け皿となって、ルーブルの下落を救済しているとの見方も可能です」

 中国当局による変動幅制限の拡大は、値動きが荒くなったルーブルを人民元に交換しやすくするための配慮とも受け止められるわけだ。ロシアが中国に軍事・経済支援を要請したとの報道を両国とも否定したが、為替市場を通じて資金が流れていることは、急激な人民元高・ルーブル安がその証左となっている。

 ロシアは人民元以外の外貨調達を阻まれたことで、外貨建て国債のデフォルト(債務不履行)も時間の問題といわれる。

 例えば3月16日に期限を迎えたドル建て債には、30日間の支払い猶予が設けられている。だが、当初の条件だったドルでの元利支払いをルーブルに変更する方針をロシアは示しており、それを実行すると、猶予期間経過後にデフォルトと同等とみなされる可能性が高い。

著者プロフィールを見る
大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

大西洋平の記事一覧はこちら
次のページ