AERA 2022年2月28日号より
AERA 2022年2月28日号より

 ただし、ワクチンの効果がまったくなくなるわけではない。

 5~11歳の場合、臨床試験では対象人数が少なく、重症化を防ぐ効果がどれぐらいあるのかはわからなかった。ただし、米CDCなどの研究チームが今年2月15日に発表した論文によると、昨年12月に感染した12~17歳を調べると、ワクチンを打っていない子どもの入院率は、2回接種を完了した子どもの6倍、高かった。米国では12月中には従来株がオミクロン株に置き換わったので、これはオミクロン株に感染した子どもも含まれた数字だ。

■持病あれば医師に相談

 また、シンガポール保健省によると、オミクロン株の流行期を含む2021年5月~22年1月の0~12歳の新規感染者のうち、集中治療室(ICU)での治療が必要だった子どもの比率は、ワクチン接種が完了していない子どもの場合0.0081%だったが、ワクチン接種完了の子どもは0%だった。また、ICUでの治療は必要なかったものの、酸素投与が必要だったのは、ワクチン接種未完了の子で0.02%だったのに対し、接種完了の子は0%だった。

 厚労省やシンガポール保健省によると、ワクチンを打っていなくても、子どもは高齢者などに比べれば重症化することが少ないが、ゼロではない。たとえば、厚労省によるとオミクロン流行期に感染がわかった5~11歳の18万2141人のうち147人(0.08%)は診断時に肺炎以上の重症だった。また、持病のある子どもの場合は、重症化するリスクが高まる。一方で、持病で体力が低下している子どもの場合、副反応が大きな負荷となり、さらに体調を崩すきっかけにもなりかねない。

 持病の有無や体力など、子ども一人ひとり、メリットとデメリットのどちらが大きいかは異なる。とくに持病のある子どもの場合、かかりつけの医師に相談して、医学的にワクチンを接種した方がいいのかどうか検討するのが望ましい。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2022年2月28日号より抜粋