会社や学校から「感染者は出たが濃厚接触者はいない」と連絡がくるが、疑問を抱くこともあるという声も(撮影/写真部・加藤夏子)
会社や学校から「感染者は出たが濃厚接触者はいない」と連絡がくるが、疑問を抱くこともあるという声も(撮影/写真部・加藤夏子)

 感染者や濃厚接触者が激増している。それに伴い、濃厚接触者には当たらずとも、感染者や濃厚接触者と接した人も増加。自粛の基準がないだけに混乱が広がっている。AERA 2022年2月14日号は「オミクロン版自宅待機」特集。

【どうする?】家族が濃厚接触者に? 子どもの習い事は?【医師が答えた】

*  *  *

「2日前、同じ部屋にいた取引先の人から『陽性になった』と連絡がありました。私は今日、出社していいのでしょうか。商談の予定もありますが、欠席したほうが無難でしょうか」

 都内の営業職の男性(29)は1月半ば、上司に電話した。この男性は、陽性者と同じ部屋にいたとはいえ「濃厚接触者」にはあたらない。

 上司の答えはあいまいだった。

「出社はしていいよ。商談するのも会社の規定上は問題ない。でも、万が一感染の可能性もあるから、念のために検査したほうがいいかも」

 ネットで都の無料検査場を探し、2カ所に電話したが「予約でいっぱいです」。他の検査場も、SNSに「5時間くらい並ぶ」と投稿されていた。

 近くのドラッグストア3店に電話して、抗原検査キットの在庫を見つけた。買ったのは、1回分で4千円台。正直、高いと思った。口の中をこすって検体を採取して15分、陰性を確認した。「商談に行くことにします」と上司に連絡した。

■定義されないケース

 新型コロナウイルスの感染者が急増している。それに伴い濃厚接触者も増え、東京では約80万人に達するという試算もある(政策研究大学院大学)。さらに「陽性者と接触したけれど濃厚接触者ではない」「濃厚接触者の濃厚接触者」など、自粛の対象には定義されていないが、不安が尽きないケースが多発している。

 現在は、濃厚接触者と判定されれば7日間の自宅待機が求められる。仕事や学校に行けず社会的な影響が大きいが、取るべき行動は決められている。全国保健所長会の内田勝彦会長(大分県東部保健所所長)が解説する。

「濃厚接触者は国立感染症研究所の通知をもとに、保健所が判断しています。状況は、陽性者と同居している、または1メートル以内で15分以上、不織布マスクを着けずに接触したなどが目安ですがケース・バイ・ケースです。オミクロン株になったからといって基準は変わっていません。社員が陽性になった場合は、通知内容をもとに企業が濃厚接触者を決めます」

■濃厚接触者があいまい

 それに対して、濃厚接触者でなければ、行動制限などの決まりは特にない。

「仕事や学校に行って構いません。心配ならPCR検査や抗原検査を受けてください」(内田さん)

 こうした「濃厚接触者未満」が増え、どこまで自粛や予防をすればいいのか、混乱が生じている。本誌のアンケートにも、戸惑いの声が寄せられた。

次のページ