試験当日の朝、不安を抱える我が子にどのようなアドバイスをするべきなのか。中学受験のプロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さん、文教大学地域連携センター講師の早川明夫さん、算数のプロ家庭教師で中学受験専門カウンセラーでもある安浪京子さんが助言する。AERA 2022年1月31日号の記事から。

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 ついに迎えた試験当日。当日の朝、家ですべきことは何か。学校へ向かう電車の中で取り組むべきものはどんなことか。限られた時間で何に手をつけるかは、多くの親子が悩むところだ。

 西村さんは「試験当日に意識すべきは、『最初に見る活字が入試問題という状態は避ける』ということ」と言う。家を出るまでの間に、新聞の社説程度の難しさのものを、たとえ完全に意味がわからなくても、10行くらい読んでおく。そして、複雑な計算を1問解く。大切なのは、「志望校の過去問で解いたなかで、正解できた問題をもう一度解く」ということ。初見の難しい計算問題には手を出さない。

 電車内では、受験勉強のため読めなかった本を読んだり、使い古した暗記教材を眺めたりする程度で十分だという。

「同じ車両には、志望校へ向かう子どもたちが何人も乗っているわけです。すると、他の子たちが自分よりも賢く見えてしまう。周囲を気にしない、という意味でも、暗記教材などに目を通して少し没頭してみるのがいいでしょう」(西村さん)

 早川さんも、車内では国語、理科、社会の知識問題を見直す時間に使うといい、と話す。国語であれば語句の意味や文法、文学史などを、理科や社会であれば暗記ものを。

「僕は“ドジノート”と呼んでいるのですが、これまでできなかった問題をまとめたノートがあれば、それを見直す程度でいいと思います」

 何より大切なのは、試験会場へ向かうときの心身の状態だ。

 「当日、志望校の門をくぐることができるだけで、凄いこと。体と心の元気だけは担保してください」(安浪さん)

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2022年1月31日号