イラスト 小迎裕美子
イラスト 小迎裕美子

 緊急事態宣言が解除されて約3カ月。テレワークから出社に切り替わったという人も少なくないだろう。テレワーク明け以降、「出社がきつい」と不調を訴える相談が増えているという。どう対策すればいいのだろうか。AERA 2021年12月20日号から。

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 テレワーク明けの出社でメンタルやられ気味……。こう苦笑するのは、大手食品メーカーに勤務する48歳男性だ。

 約1年半のテレワーク期間は快適だった。朝は始業時間の9時直前まで寝ていられ、昼の休憩時間にはソファで仮眠できる。家事に「夫の昼食作り」という新たな仕事が加わった妻(50)が始終イライラしているのとは対照的だった。

 しかし、10月にテレワークが解除。起床時間が一気に2時間早まり、朝起きるのがつらい。満員電車に揺られての片道1時間の通勤は、コロナ前よりも耐え難く感じる。

■深夜までゲームに没頭

「テレワーク明けの出社がきついと訴える社員にどう対応するべきか、人事部からの相談が増えています」

 こう話すのは、複数の企業の産業医を務める「産業保健メンタルヘルス研究会」代表理事の鈴木安名さん。「明け」以降、仕事の能率が低下したり、ミスやトラブルを頻発。疲れた様子で、笑顔がなく、欠勤が目立つ。しかし体の病気があるわけではない──。メンタル不調が頭に浮かぶが、鈴木さんはその原因を、自身の造語「在宅時差ぼけ」という言葉で説明する。

「テレワーク中に体内時計が乱れ、海外旅行で時差ぼけが起きた時のような不調が生じているのです」(鈴木さん)

 大学院修了、入社3年目、一人暮らしの上場企業社員のケースでは、テレワークで通勤時間がなくなり時間に余裕ができたため、平日も深夜過ぎまでゲームに没頭。テレワーク明けに生活を元に戻そうとしたものの、夜眠れず、朝起きられず、遅刻や欠勤が増えた。メンタル不調を心配した上司の勧めで、鈴木さんへの相談につながった。

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