イベント会場の一角でほっと一息。会場では率先して来場者に対応していた(撮影/写真部・東川哲也)
イベント会場の一角でほっと一息。会場では率先して来場者に対応していた(撮影/写真部・東川哲也)

 短期集中連載「起業は巡る」の第2シリーズがスタート。今回登場するのは、フェムテックで女性の悩みの解消をめざす「フェルマータ」の杉本亜美奈(33)だ。AERA 2021年11月29日号の記事の3回目。

【写真】「フェムテック・フェス 2021」には大勢の女性たちが訪れた

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 ミスルトウは様々な勉強会を催している。アミナが帰国した後のある日、フェムテックの勉強会に、飲み友達の中村寛子(ヒロコ)が顔を出した。アミナがリービンの会社で働いている時、ヒロコが取材に来て、そこで2人は意気投合した。勉強会が終わるとヒロコが聞いた。

「アミナ、今度のゴールデンウィークはどうすんの?」

「ん? 一人合宿」

「何それ」

「フェムテックの会社を作ろうと思ってて。どっかにこもって事業計画を考える」

「へえ、面白そう。私も行くわ」

 2人は東京・広尾の図書館にあるワーキングルームを借り、そこにこもった。海外のフェムテック企業の動向から女性ホルモンの研究論文に至るまで関連する文献を片っ端から読みあさる。英エディンバラ・ネピア大学でマーケティングを専攻したヒロコも英語はお手のものだ。

 ヒロコの父は大手ディベロッパーを早期退職し、コインランドリーの経営を始めた人だ。ヒロコに留学を勧めたのも父だ。大学を卒業後、ロンドンの人材会社で1年ほど働き、その会社が日本に支社を作ることになり、そのサポートで日本に戻った。その後、デジタルマーケティングのカンファレンスを主催する会社でアルバイトを始め、やがて正社員になった。

 生理の重いヒロコは低用量ピルを処方してもらっていたが、クリニックは平日の朝9時から夕方5時までしか開いていない。そのため、有給休暇を取ってピルをもらいに行っていた。

「なんか違うよなあ」

 日本での働き方に違和感を持つヒロコは15年、女性のエンパワーメントなどをテーマにビジネスカンファレンスを企画する会社を設立した。そんなヒロコにとって、アミナが立ち上げるというフェムテックの会社は、まさに「ドンピシャ」だった。

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