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 野党共闘が注目された衆院選で、立憲民主党と共産党は議席を減らした。理由は何なのか。コロナ対策で成果を上げた自治体トップと気鋭の政治学者、ジャーナリストが意見を交わした。AERA 2021年11月15日号より。

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 東京都世田谷区長の保坂展人さんと政治学者の中島岳志さんが10月31日、2人のYouTubeチャンネル「船を出そう!」で、衆院選の結果を語り合った。ゲストは共同通信編集委員の竹田昌弘さん。今回はその議論を再構成し、結果の分析や野党共闘のあり方についてまとめた。

──衆院選で自民党は15議席減らしたものの単独過半数を確保し、自民・公明両党で「絶対安定多数」を確保しました。対する野党は、共闘した立憲民主党が13議席、共産党が2議席減(れいわ新選組は2議席増、社民党は現状維持)。一方で、日本維新の会が改選前の4倍近い41議席を獲得しました。

中島:これほど総理総裁の影が薄かった選挙は珍しいです。

保坂:岸田文雄新内閣へのご祝儀相場も期待されましたが、そのムードすら形成されませんでした。自信がなかったのでしょう。(首相就任直後に衆院を解散し)短期的な損得勘定だけを考えてしまうところは、菅義偉前首相とも共通します。そうした計算が裏目に出て、甘利明前幹事長ら政権中枢を担った人たちが苦戦することになりました。

■元自民党幹事長も落選

竹田:大物の落選が相次ぎました。元自民党幹事長の石原伸晃氏、元五輪相の桜田義孝氏(比例復活)、前デジタル相の平井卓也氏(同)らです。野党でも小沢一郎氏(同)や中村喜四郎氏(同)が苦戦を強いられました。

──世代交代を指摘する声もありました。

保坂:どの政党も高齢化の問題を抱えています。後援会や集会に集まる人の多くは65歳以上です。この10年ほどで、選挙の現場を仕切っていた人が亡くなったり、倒れたりといったこともずいぶんあったでしょう。

中島:なるほど。

保坂:旧来的な選挙の枠組みになじみがない30代、40代の人たちは維新と反りが合うのではないかと思います。維新が次の参院選や衆院選に向けてどういった役割をするのかも注目です。自公、野党、維新の三極化もありえるのではないでしょうか。

中島:野党共闘によって自民対立憲の構図が期待されましたが、実際は両党とも票を減らしました。投票率が55%前後だと、「2:5:3」といって野党が2、浮動票が5、与党が3の割合で票が投じられるのが常です。今回、与党票や浮動票のなかで自民に入れたくないと考えた人たちが現れました。だからといって、立憲にも入れたくないわけです。これが維新に回ったと考えられます。

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