コロナ禍で自宅で過ごす時間が増えたせいか、SNSと向き合う時間も延びている(gettyimages)
コロナ禍で自宅で過ごす時間が増えたせいか、SNSと向き合う時間も延びている(gettyimages)

 少女には少ないはずの神経障害「チック症」が欧米各国で急増している。原因はTikTokとの説があり、問題視した米議会が、動き始めた。AERA2021年11月8日号の記事を紹介する。

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 長い金髪の若い女性が車の運転席で、首を斜めにピクピクと振る。「TikTok(ティックトック)」の動画に登場した彼女の目は、半開きだ。それには「もし、トゥレット症候群になりたかったら」という字幕がつけられている。

 トゥレット症候群は神経系の障害で、本人の意思とは関係なく、繰り返し特定の動きをしたり、声を発したりする。それらの動きはチックといい、個別の症状を「チック症」という。彼女は「ticcingtogether(一緒にチックちう)」というアカウントで、約1万9千人のフォロワーがいる。

■コロナ禍で患者が急増

 こうした動画を見て症状をまねた結果、少女や若い女性に症状が出てしまい、病院に来るケースが異常に増えているという。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の報道では、米国やカナダ、英国、オーストラリアで医師らが調査したところ、彼女らに共通していたのは、TikTokのユーザーということだった。

 WSJによると、トゥレット症候群を専門とする米国の医師は昨年3月以降、チック症を患う10代の新規患者を月に10人前後診察している。コロナ禍の前は月1人程度だった。つまり、患者が増えたのは、新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンで、学校が閉鎖されて自宅学習が始まった時期と一致している。

 またWSJは「米ジョンズ・ホプキンス大学精神医学・行動科学科のジョセフ・マグワイア准教授によると、同大のトゥレットセンターでは、小児患者の10~20%がチック症のような動きを突然するようになった。だが、パンデミックの1年前は2~3%程度だった」という。さらに英国の医師の報告として、「今年1月に調査を開始した際、#tourettesというハッシュタグが付いた動画の再生回数は約12億5千万回に上り、その後も48億回にまで伸びている」と報道している。

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